恐怖の泉

実話系・怖い話「ニパウイルス」

ニパウイルスは、パラミクソウイルス科ヘニパウイルス属に分類される人獣共通感染のウイルスです。
名称は、ニパという村に住んでいた患者からウイルスが初めて見つかったことに由来しています。

1997年頃から、マレーシア・シンガポールの養豚農場関係者の間でぽつぽつと急性脳炎が発生し始めます。
当初は日本脳炎によるものとみられていましたが、日本脳炎ワクチンの接種者にも感染が広がり、1999年には患者が265人へ急増。うち105人が亡くなる事態となりました。
時を同じく豚の間でも呼吸器感染症が広がっており、なんらかの関連が疑れました。

そこで調査が行われた結果「ニパウイルス」という新種のウイルスを検出。
感染源となった豚の大量殺処分と養豚場閉鎖が行われて感染は終息しましたが、養豚業界は壊滅的な大打撃を受けてしまいました。

その後、バングラデシュでもニパウイルスによる感染が発生。2001年から2008年までに207人が感染、うち152人の死亡者が出ています。

今のところ、ニパウイルスによる日本での発生例や輸入症例は報告されていませんが、感染症法により四類感染症に指定されています。

感染経路

ニパウイルスの自然宿主はコウモリ類であることが判明しています。
マレーシアとシンガポールの例では、コウモリ(オオコウモリ)の生息地を開発して新たに豚の養殖をしたために、コウモリから豚へニパウイルスが感染・蔓延。
それが排泄物や鼻水といった体液を介して人間に感染が広がりました。

バングラデシュでのケースでは、豚でのニパウイルス流行は確認されておらず、コウモリから人、あるいは人から人への感染が推測されます。
ですがマレーシアで感染者の対応や研究に当たった人からは感染者が出ていないことから、人から人の伝播は低いと考えられています。

ニパウイルスは豚と人間の他に、馬、犬、猫、ヤギ、鳥、げっ歯類へ感染することがわかっています。
特に豚で流行しやすく、豚を仲介することで他の動物へ感染が広がると考えられています。

ちなみにパラミクソウイルス科ヘニパウイルス属のウイルスには、ニパウイルスの他にヘンドラウイルスというものもあります。
ヘンドラウイルスはニパウイルスとよく似たウイルスで、まだオーストラリアでしか感染報告されていません。
発病例は少数ですが、馬と人に高い致死性をもたらす感染症を引き起こしました。

コウモリ類はニパウイルス、ヘンドラウイルスの他に狂犬病の自然宿主でもあり、無防備な接触は避けるのが望ましいです。

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症状

豚へ感染した場合は、呼吸器系の疾患が主で致死率は5%未満ですが、人間の場合だと40%~70%という高い致死率となります。

感染すると急激な発熱、めまい、頭痛、嘔吐、筋肉痛といったインフルエンザ様症状、痙攣、急性脳炎症状、神経障害、呼吸障害を発症します。
意識障害が起こると非常に予後が悪く、例え命が助かっても高い確率で後遺症が残ることが報告されています。

治療・予防方法

ニパウイルスの治療方法やワクチンは今のところありませんが、研究が進めらています。
ウイルス感染による危険性が高いため、ニパウイルスと、上記しましたヘンドラウイルスは共にBSL-4(最高レベルのバイオセーフティ施設)での取扱が指定されています。

予防方法としましては、ニパウイルスに感染の疑いがある動物との接触を避けることが挙げられます。
ニパウイルスの宿主であるオオコウモリ類は果物類や花蜜を主食としているため、それらにはウイルスが付着している可能性があると警戒する必要があります。
また豚を介すると感染が拡大しますので、飼育をする際は適切な管理が求められます。

ニパウイルスは、人の生活域が開発で広がったことにより起きた感染症と言えるのではないでしょうか。
人間の暮らしが豊かで便利になるのは結構なことではありますが、人間本位で環境破壊が進むと自然から思わぬしっぺ返しが来る…のかもしれません。

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