恐怖の泉

実話系・怖い話「破傷風」

破傷風(はしょうふう)は破傷風菌を病原体とする人獣共通感染症です。人間の他にも、牛や馬、シカなどの哺乳類へ主に感染します。
子供の定期予防接種の項目にあるので知っている方も多いかとは思いますが、とても怖い病気なのです。

感染経路

破傷風菌の感染経路は傷口ですが、ほんのわずかな傷でも体内に侵入して感染します。破傷風菌は芽胞という冬眠状態になって土壌やゴミの中、動物の糞などに広く存在しており、菌への接触や感染を避けることは難しいです。人から人への感染はありません。

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症状

破傷風菌の怖い所は、菌が繁殖した時に出す毒素です。
「テタノリジン」と「テタノスパスミン(破傷風毒素)」という2種類の毒素を出すのですが、特にテタノスパスミンの毒性は強烈で、破傷風独自の症状を引き起こすと考えられています。
テタノスパスミンは地上最強の毒素・ボツリヌストキシンに次ぐ強さの神経毒です。
体重1kgの半数致死量は2ng(0.000002mg)とされており、致死量は体重60kgの人の場合、およそ0.15μg程度と考えられています。

破傷風の潜伏期間(感染してから発病するまで)は2~60日、新生児の場合は4~14日です。潜伏期間が短いほど死亡率が高くなり、治療も難しいです。
破傷風の平均的な死亡率は50%と高いです。未治療の成人の場合は10~60%、新生児だと治療したとしても60~90%が10日以内に死亡する怖い病気です。
近年は30歳以上の成人や高齢者、薬物乱用者の発症が多く報告されています。大人になってからの感染は、後述しますがワクチンを受けていない、あるいは効果が切れてしまうことが主な原因です。薬物乱用者は不衛生な針を使い回すことで感染・発症しています。
予防接種や衛生管理の徹底した先進国では、乳児が感染することは稀な病気です。日本においては、新生児が破傷風となったのは1995年が最後で、その後は報告されていません。
ですが発展途上国では今でも年間十万単位の赤ちゃんが破傷風で亡くなっています。しかもその原因が、不衛生な環境での出産による破傷風感染だというのは、なんとも悲しい話です。

ボツリヌストキシンが静・つまり麻痺型な毒なのに対して、テタノスパスミンは動・筋肉の痙攣やこわばりが主な症状です。
破傷風に感染すると、まずは肩が凝る、口が開きにくい、うまく喋れない、顔がこわばる、物が飲み込みにくい、引きつり笑いといった症状が起きます。意識ははっきりしています。
そしてさらに進行すると、こわばりや痙攣が全身に広がって歩けなくなる等の症状が出てきます。
特に背中の筋肉の痙攣が強烈で、体が弓なりに反り返ってしまう独特の症状が起きます。しかも痙攣の力が強いため、背骨が骨折したりととても苦しんでしまうのが破傷風の特徴です。最終的には呼吸困難となり死亡します。
この一連の症状が48時間以内に起きた場合、あまり良くない経過をたどってしまいます。

治療・予防方法

破傷風を予防するには、菌の出す毒素に抵抗をつける必要があります。つまりワクチン接種が主な予防法です。
ワクチンをしっかり接種した場合でも、その効果はおおよそ10年と言われています。ですので子供の頃にワクチンを打ったからといって安心できる病気ではなく、10年間隔の定期的なワクチン接種が必要とされています。
日本において破傷風ワクチンが実施されたのは1968年(昭和43年)頃からなので、子供の頃にワクチンを打っていない方は接種が望まれます。

破傷風のワクチンは三種混合ワクチンで、他にもジフテリア、百日咳の予防もできます。

感染・発病してからはなるべく早く治療を受ける必要があります。毒素が体にまわる前に手を打つことが重要なのですが、発病するまで破傷風に感染しているかどうか判断するのは難しいです。発病してからは症状に対する対処療法しかなく、集中治療室で経過を見ます。

基礎的な予防としては、まず土に触れた部分や傷口はしっかり洗浄することが重要です。破傷風菌は空気に弱いので、傷口は乾燥させるようにしましょう。
深い外傷を負った場合は、必ず病院へ行くよう心がけて下さい。

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