恐怖の泉

実話系・怖い話「ボツリヌス菌」

ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥に広く分布している菌です。
ボツリヌス菌の出す毒素は「ボツリヌストキシン」と呼ばれ、その毒素の特徴からA~Gの型に分類されています。

最強の猛毒

このボツリヌストキシンは、現在地球上にある毒素の中でも最強の猛毒です。
半数致死量は体重1kgあたり0.37ng(0.00000037mg)で、体重70kgの人の場合、最も毒性の強いA型毒素だと静脈・筋肉注射で0.09~0.15μg、吸入の場合0.7~0.9μg、経口摂取だと70μgとごく微量でも死に至ると推測されています。
全世界の人口を滅ぼすには500gもあれば足りると考えられているので、テロリストによる使用が懸念されている細菌でもあります。オウム真理教も使用を目論んでいましたね…。
しかし実際にはボツリヌストキシンを散布しても太陽の光などで容易に失活するので、兵器として使用するには非現実的であるとも言われています。

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症状

ボツリヌス菌はしばしば食中毒の原因となり、現在でも世界中で発生しています。
1歳未満の乳児だと、乳児ボツリヌス症という通常のボツリヌス中毒とは違った感染の仕方をすることもあります。

ボツリヌストキシンは神経毒で、中毒症状は筋肉の麻痺です。ボツリヌス中毒になると、およそ8~36時間後に吐き気、嘔吐、腹痛などの症状が現れ、手足の脱力、物が二重に見える、うまく喋れない、物が飲み込みにくいなどの異変が起きます。意識ははっきりしているのに、最終的には呼吸する筋肉も麻痺して呼吸困難となり、死亡します。
乳児ボツリヌス症は、侵入したボツリヌス菌の芽胞(冬眠のような状態のもの)が腸内で発芽して毒素を出し、便秘や脱力などの麻痺症状を引き起こします。
これは乳幼児の腸内細菌が不足していることと、消化器官が未熟であることが原因とされています。
また稀に傷口から感染することもあり、その場合も麻痺症状が現れます。

ボツリヌス菌は酸素が苦手なため、酸素が少ない状態になると増殖し始めて毒素を出します。
そのため缶詰や瓶詰、真空パックされた商品を食べた場合に食中毒となるケースが多いです。
ちなみに亜硝酸ナトリウムがよく食品添加物として使用されていることが多いですが、これはボツリヌス菌の増殖を抑える効果があるためです。
乳児ボツリヌス菌の場合、芽胞を乳児が口にすることで発症します。感染源としては井戸水、蜂蜜がほとんどですので、1歳未満の子供には絶対に口にさせないよう注意しなければなりません。

治療・予防方法

適切な治療が施されない場合は30%以上の死亡率と危険ではありますが(治療した場合は致死率約5%)、治療方法がありますのでしっかりとした診断が大切です。
乳児ボツリヌス症は致死率が低い(約2%ほど)ですが、何より予防が必須です。

中毒になった場合は血清が有効で、毒素の型A~Gに合わせたものを使用します。近年は医療の進歩も相まって、麻痺が起きても呼吸の確保が出来ていれば、多くの患者が回復して助かります。
またボツリヌストキソイドというワクチンもありますので、予防することも可能ではあります。

幸いなことにボツリヌストキシンは変質しやすく、100度で2分間以上加熱すれば毒性を失います。そのため予防方法としてはまず食品の加熱をしっかり行うことが重要です。
その他予防として、自家製で瓶詰・缶詰にした食べ物や、作り置きした食べ物はなるべく早く食べきるようにしてください。
消費期限が切れたものや、少しでも異臭がしたもの、真空パック等が膨らんでいるものは危険です。
よくサ○ンラップ等をすれば食べ物の保存ができると考えがちですが、ボツリヌス菌からすればラップをかけた食品は酸素が断たれるので、格好の巣になります。
いずれにせよ、早く食べることが重要となります。
また野菜などの土がついた食品は、よく洗ってから調理しましょう。

一方ボツリヌス菌の芽胞となると、その除去は加熱では困難となります(100度で6時間以上・120度で4分間の加熱が必要)。
大人の場合は芽胞なら腸内細菌が退治してくれますが、まだ成長の未熟な乳幼児は芽胞だけでも危険となります。
乳児ボツリヌス症の予防は前述したように、1歳未満の子供には蜂蜜や井戸水を口にさせないことが有効となります。

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