恐怖の泉

人間の怖い話「危機一髪の逃走」

これは私が大学へ入学して間もない頃、新生活にもようやく馴染んできたかなという時の話です。

私はよくゲームセンターで友人と遊んでいたのですが、いつからか記憶は定かではないのですが、一緒に遊ぶようになった男性がいました。
それはOさん(仮名)という人で、年齢は私と同じくらい。非常に物腰がやわらかくフレンドリーで、ゲームセンターで出会ったら遊ぶ関係になりました。
特に当時流行していた某レーシングゲームはお互いに熱中し、レベルが上がったらマシンをどうカスタムすると良いかと話しては盛り上がっていたものです。

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Oさんは飲食店のキッチンスタッフとして働いているらしく、名刺も見せてくれて食事でも行こうということになりました。
身の上話も聞いたし何度も遊んだ仲なので、私の警戒心はもう無くなっていたのでしょう。
電車で街中の店へ出向いて食事をしたのですが、店から出てしばらく歩いているとOさんが変なことを言い出しました。

「君は神を信じたことはあるかい?」

何かの冗談を言っているのかと思い適当に返事を返すと、Oさんは神について語り出します。
正直興味が無いので早く帰りたかったのですが、熱く語るOさんには隙が無く、別れるタイミングが掴めません。
「これから君にしっかりと教えてあげる。人生を幸せに導く為に、一緒に僕の仲間がいる所へ行こう!」
Oさんは私の腕を強引に引っ張り、どこかへ連れていきます。
不穏な雰囲気に、これは不味いと思った私はOさんに
「目を覚ましてください!そんな宗教なんてインチキに決まってるじゃないですか!」
と結構強めに言いました。
私は普段から他人へ強い物言いをするタイプではありませんが、このままでは良くないという気持ちで必死に説得を試みます。
どうやらOさんは某宗教にのめり込み、かなり染まっている様子でした。

宗教の知識が無い私でしたが、必死に説得を続けるとOさんがようやく手を放してくれました。
あぁ分かってくれたのか、そう考えるのも束の間。
Oさんは前方に対して何か合図をするような動きをします。
すると遠くから男3人がこちらへ近づいてきました。内1人はパッと見でも結構体格が良く、間違いなく武道か何かをやっていそうです。
これはヤバいと感じた私は、裏路地の細い通りをめちゃくちゃに走って逃げました。

後ろからは
「オイ!」
と野太い声が聞こえて、どうやら私を追って走っている気配でしたが、何とか逃げる事に成功して一安心。
適当な店へ入って時間を潰し、さてそろそろ帰っても大丈夫だろうと駅へ向かうと…。
改札付近にOさんらしき人物が立っているのを見かけました。

明らかに誰かを探している様子で、表情までは見れませんでしたが怒っているような雰囲気を醸し出していました。
もしかしたら他の3人もどこか近くをうろついているのかもしれません。
やむなく電車は諦めてタクシーで帰ろうとすると、そこにもキョロキョロしながらウロウロしている男性を見かけました。もしかすると追いかけてきていた3人の内の1人でしょうか…。
仕方なく夜道を歩いて2時間程歩いて帰る羽目になりましたが、道中は後ろから人が迫ってこないか気になって仕方がなかったです。
その後、もうゲームセンターへ遊びに行くことはしませんでした。

そんな恐怖の出来事から月日が流れ、何気無く読んだ雑誌で驚愕の事実を知りました。
Oさんが言っていた宗教法人が、男性を監禁し殴る蹴るの暴行を加えて男性は重症。他県でも入信を断られたからといって人を刺した事件も起こしていたのです。

もしもあの時、逃げ出すのに失敗していたら。
私はどうなっていたのでしょうか…。

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