実話系・怖い話「カラスの墓場」
これは小学校低学年の時に1度だけ、私が見た場所の話です。
私が子供の頃は、遊ぶといったら近くにある裏山へ突入する事でした。
その時は確か「きのこ探し」をしていて、誰が珍しいきのこを手に出来るか競い合う事になり、兄弟や友人達と山へ遊びに行きました。
夢中できのこを探していると、ふと友人の1人が
「なんだか静かだね…。」
と呟きました。
皆が手を休めて辺りを見渡すと、確かに気味が悪い程の静けさでした。
夏でしたから、いつもなら蝉や風の渡る音、鳥や虫の声でけっこう賑やかなはずです。
それがシン…と静まり返っています。
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誰かが「帰ろう」と提案しました。
返事をするでもなく、皆怖くなったのか一目散に山を下って行きます。
ところが私は足が遅くて着いて行けず、はぐれてしまったのです。
その時、上からカラスが襲ってきました。
くちばしを避けようと体をそらせたのですが、私はバランスを崩して谷に向かって滑り落ちてしまいます。
ザザザザッと滑り落ち、幸いにも柔らかい所へ落ちました。
崖は見上げるほど高く、子供の私が登れるかどうか…。怪我一つ無いのは奇跡的でした。
それでもすでに夕暮れが迫っています。登る決意をして体を起こし、上へよじ登ろうとした時でした。
ぐにゃり…
地面とは違う、足元の異質な感覚。
足元を見ると、カラスの死骸がありました。
うわっ!と飛びのいたら、よく見ると谷の下一面がカラスの死骸で埋まっていました。
無数のカラスが積み重なり、共喰いをするのか生きているカラスが突っついて、肉か何かを引きずり出し貪っています。
よく目を凝らしてみると、鳥ではない別の大きな生き物の骨もあったような気がします。
「助けてー!」
私は必死に叫びましたが、山なので人の気配は無く、救助の望みは薄そうです。
仕方なく必死に草を掴み、少しずつよじ登りました。
崖を登っている時の記憶は曖昧で、私は気がつくと近所のおじさんに背負われていました。
私は
「カラスのお墓があったんだ!山のように死骸があった!」
と訴えましたが、一緒に遊んだ友人や兄は
「お前、一緒に山をおりたんだよ。」
と言って認めません。
山に置き去りにしたことを隠す口実なのでしょうか、その本心は分かりません。
私を背負った近所のおじさんも、家の近くで私が倒れていたから運んだ、と言っています。
山に精通している大人達も、そんなに死骸があったら気付くだろうが、聞いた事も無いそうです。
私自身、後にも先にも無数のカラスの死骸を見たのはあれっきり。
現実だったのか、それとも白昼夢だったのか…。
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