恐怖の泉

人間の怖い話「危険な常連客」

私は大学生の時、喫茶店でアルバイトをしていました。
接客業が好きだったので、とにかく笑顔でお客さんに良い印象と元気をあげたいと思って仕事を頑張り、社員の方にも
「いつも笑顔でいいよね。」
と褒められていました。

そのお店にはほぼ毎日来る、いわゆる常連客がいたのです。
周囲からは「絶対にA(私の仮名とします)目当てだよ」と言われていて、確かに目線が頻繁に合うし、私を狙ってオーダーをしてくることはありました。
私はあまり気にしないで接客をしていたのですが、ある日そのお客さんからメモの切れ端を渡されます。
何だろう?と思ってその紙を見ると、住所と電話番号が書かれていました。

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私はお客さんに贔屓が無いよう心掛けていたので、何事も無かったように反応しないでおきました。
1週間くらい経った頃でしょうか。久しぶりにその常連客が来て、またメモをもらいました。
お客さんなので断ることが出来ずに受け取り、後で見ると住所と部屋番号が書かれていたのですが…それがなんと私の部屋ではありませんか。
しかも住所の下には「今度ここに行っても良いですか?」と書かれています。

当然ですが、私はその人に自分の住所なんて教えていません。
もの凄く気持ち悪かったのですが、相手にしなければきっと諦めてくれるだろうと思い、私はそのまま放置してしまいました。

2日経ち、また常連客が来て今度は封筒を渡してきました。
私は今後私的な受取は断ろうと思い、そういう事をされては困るという趣旨のメモを準備していたので、それを渡しました。
彼から受け取った封筒には、いつ撮ったのか私の写真が入っていて、裏にはこう書かれていました。
「明日家に行くから待っていてね。」
気持ち悪くて堪らなくなった私はその写真を捨て、身の危険を感じたので事情を話して友人の家へ泊まらせてもらうことにしました。

それからはバイトへ行くのも怖かったのですが、出来事を社員の方達へ話すと、とりあえず接触させないようにするから出勤して欲しいとの事。
不安ながらも常連客が来ないので諦めたのかな、と思っていた矢先の3日目でした。
私が裏手へ回って1人でゴミを捨てに行くと、なんと彼が待ち伏せをしていたのです。

驚きのあまり、私は身動きが取れませんでした。
彼は手にナイフのようなものを持っており
「どうして無視するの?」
と言います。
私は思いつきで
「ごめんなさい。他に好きな人がいるから。」
と嘘を言ったのですが、彼は
「だったらその人と別れて僕と付き合ってよ。絶対に大切にするから。」
と強引な態度です。
私はとにかく「ごめんなさい」と言い続けるしかありませんでした。

すると彼は
「だったら僕の好きにしちゃおうかな?」
とナイフをちらつかせてきました。
私は恐怖で体が凍り付いてしまい、声を出す事も出来ません。
しかし次の瞬間
「何やっているんだ!」
と後ろから来た男性社員が声を張り上げ、常連客は逃げていきました。

その後は警察が来て事情聴取をして、常連客の行方を追ってくれました。
彼が喫茶店へ再び来ることはありませんでしたが、やはり気持ち悪いので私はアルバイトを辞めました。
そして引越しをして、携帯電話の番号も変えました。

この体験がすっかりとトラウマになってしまった私は、接客業の夢が断たれただけで無く、人前に出る事が恐怖で出来なくなりました。
男性への恐怖心克服もかなり長い年月がかかりましたが、今は普通に生活しているとはいえ、完全に以前の状態に戻ったとは言えません。
ニュースで度々惨いストーカー犯罪が流れますが、あの時もしかしたら私も…と考えると、心底から震えがきます。

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