実話系・怖い話「帰りたくない実家」
高校を卒業と同時に家を出て以来、初めて家族揃って帰省し泊まりました。
実家は私が小学校低学年時に新築して以来、夜中に金縛りにあったり、廊下で知らない人とすれ違ったり、ふすまを開くと見たことがない座敷がそこにあったり…。
不可解な出来事が起こるようになりました。
私だけではなく家族も度々そんな目に遭って、毎日のように話題にしていました。
よく起こるとは言っても慣れるものではありません。
毎日夜になるのが不安で、ひたひたと恐ろしいものが忍びよる感じに体が強張ります。
部屋数はたくさんあるのに1人で寝ることはありません。お風呂もトイレも母と一緒に行きました。
父には、家の事は誰にも言ってはいけないと口止めされていました。
怪異の原因で思い当たることがあったようで、当時大工さんから大きな旅館を取り壊す話を聞いた父が格安で古材を分けてもらい、家を建てたのです。
旅館は火事を出してから客足が途絶えて、閉めてしまったのだと聞いています。
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「なんにもしないだろ。怖いと思うから怖いんだ。」
私たちがいくら訴えても父親は平然と暮らしています。
「だって仕方がないでしょ、家はここしかないんだから。」
母も諦めています。
私は早く大人になりたかった。一刻も早くこの家を出たかったのです。
金縛はかかる前からわかります。
じわじわと足元が重くなり、お腹のあたりが痺れたようにムズムズします。その後に全身が硬直します。
金縛を解くのには声を出せばいいのですが、なかなか声にならなくてうなされたような声しか出ないのです。
誰かがそんな状態になっていれば、体を揺するとすぐに解けます。
久々に両親と、5歳の長男、3歳の娘、私たち夫婦で夕食の食卓を囲みました。
長男は居間の隅をじっと見つめてご飯がすすみません。
私はぞっとしました。
「隅っこになにかあるの?」
「あっちの方がごちそう食べてるね。」
「いいから見てないで、ご飯食べるよ!」
旅館の古材で建てたことを思い出しました。
息子には何か、別の風景が見えているのかもしれません。
3歳の娘は、布団を敷くと知らない歌を口ずさみ、いつの間にか寝てしまいました。
幸いそれ以上のことは起こりませんでした。
朝が来てほっとしたのは昔と同じです。
それからしばらくして、息子が突然
「またじぃじばぁばの家に行きたいなぁ。」
と言ったことがあります。
実家にはあれ以来、子供を連れて行ったことはないし、泊まることもありません。
「H君やNちゃんとまた遊びたいなぁ。」
聞いた事もない名前でした。
ふと私の古い記憶にあった、実家の奥にある暗い部屋で遊んでいた2人の子供が脳裏に浮かびます。
「もう引越ししちゃって居ないんだって。また遊びたいねぇ。」
子供には怖い話や、ほの暗い世界の話は絶対にしたくないです。
知らない方が良い事もありますから。
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