恐怖の泉

人間の怖い話「私が1番」

これは私が大学生だった時、同じバイト先で知り合って仲良くなったA(仮名)の話です。

Aはすごく優しくて皆から好かれており、中心的な存在です。
困っている人がいたらすぐに自ら動き助けてくれますし、誰よりも一生懸命働き信頼されていました。
バイトは皆が仲良く働いていたのですが、私は特にAとは仲が良かったと思っていました。
大学は違いますが同い年ですし、相性が良いのか共通する話題も多くて何でも話してしまいます。

そんな彼女に、私は大学に入ってからずっと付き合っていた彼氏の話をしました。
恋バナは誰でもする定番ですが、不思議と今までAとの話題にした事はありませんでした。あまり深く考えていなかった私は、流れで話をしたのです。
Aは一生懸命に私の話を聞いてくれて、役立つアドバイスなどもくれました。
ちなみにAはちょっと前に別れたらしく、今はフリーなのだそうです。

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Aに恋愛の話をしてしばらくすると、私の彼氏の様子がおかしくなっていきました。
週に2回は会っていたのが、何故か忙しいからと月1回程しか会えなくなります。
電話しても電源が切られていたり、メールも無視されたり。付き合って2年くらいになりますが、今までそんなことは一度もありません。
毎朝おはようメールをして、おかえり、おやすみのメールなども欠かさず、マメな彼氏だったはずなのに…。
ひょっとして他に好きな人が出来たか、それか浮気かも?と疑った私は直接彼に聞いてみます。
ですが彼は「そんなはず無いよ」の一点張りで、別れる気もないとのことでした。

それでも流石におかしいと思った私は、駄目だと思いながらも彼氏の行動を尾行する事にしました。
彼は同じ大学で私の1コ上でしたから、こっそり彼の後を追っていきます。
すると彼は大学から出て帰るのかと思いきや、家とは全く違う方向へ向かうのです。

彼氏はとある店へ入り、どうやら誰かと待ち合わせをしているようでした。
しばらくしてそこへ現れたのは、なんとAでした。
私は何で?!と頭が混乱していたのですが、それでも尾行を続けます。
店を出て、手を繋ぎながら歩いて行く2人は、そのままラブホテルへと入って…。

あまりのショックで、私は血の気がスーッと引き、倒れそうになるのを何とか堪えました。
まさかAが私の彼氏と浮気をしていたなんて。
そもそも彼氏とAがどうして接点を持っているのでしょうか。ちょっと話題にしただけで、特定できるような情報は何も伝えていません。
私の頭の中はもうグチャグチャです。

次の日、私はAを呼び出して話合いをしようとしました。
昨日の事は全て見ていた、どういう事か説明して欲しいと、自分の感情を抑えながら問います。
Aはどういう反応をするのだろうかと色々予想していましたが、彼女の反応は私の想像を超えたものでした。
今まで優しかったAはどこへやら、急に人が変わったように嫌悪感を振り撒きながら喋り始めます。

「だから何?あんたの彼、ちょろいわね。私が誘ったらすぐに手を出してきたよ。」

あまりの豹変で呆気にとられながらも、どうしてそんなことをしたのか尋ねます。
すると彼女は言いました。

「だって許せないでしょ。1番はいつも私なの。
今、私には彼氏がいないけど、それはあなたが私より魅力的な訳じゃないんだよ。
あんたが私より上になんて絶対になれないんだから。調子にのらないで。」

私は開いた口が塞がりませんでした。
今まで見ていた、誰にでも優しくて親切なAはなんだったのでしょうか。
「あなたってそういう人だったの?」
と私の思いをぶつけてみると、Aは
「そうよ。みんなすぐに騙されるんだから、本当にバカだよね。」
と悪態をつくのです。

もう私はAと縁を切ると決めたのですが、皆から信頼されているAです。
Aの本性を暴露しようにも、そんな事を言っても悪者になるのは私でした。
彼氏にも別れを切り出しましたが、彼は泣いて謝ります。到底許せるはずもなく、2度と会いたくないと伝えて別れました。

私はこの件以来、他人が信じられず、関わるのも嫌になってしまいました。
もちろん全ての人間がそうでは無いと思うのですが、もしAのような人間だったら、また同じ事が起きたらと思うとゾッとします。

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