恐怖の泉

実話系・怖い話「天井の顔」

父親の実家へ家族3人で里帰りした時、高速道路がかなり混んでいたため途中で宿泊することになりました。
高速道路から降りると街から離れた場所でしたので、辺りは草原が広がる田舎でした。
まだ16時だというのに薄暗く、冷たい風が吹き付けます。

そんな状況でしたから、私は宿泊先も決まっていない事に不安な気持ちになり
「ねぇ、どうするの?泊まるところ。」
と運転する父親に聞きます。
しつこく私が聞くものですから、父親は
「煩しいなぁ!とりあえず街の方に行ってみるよ!」
とイライラした様子で答えます。

明かりのある方へ行くと歩いている人がいたので、泊まれる場所はあるかと尋ねてみました。
すると「少し行った場所に小さな旅館があるから行ってみるといい」という情報が。
書いてくれた地図を辿りながら、私達家族は旅館へと向かいました。

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着くと旅館はかなり小さく、他に宿泊者はいない様子です。
フロントでカギを受け取り、軋む廊下を歩いて部屋へと入ります。
家族は温泉に入るためにまた部屋を出たので、私は部屋で一人寛ぐことにしました。

私が浴衣に着替え、横たわりながらテレビを観ている時でした。
テレビの横辺りから、こちらをジッと見ているような気配がして落ち着かなくなりました。

なんかいる…?
そう感じた私が廊下へ出ようとしたら、今度は天井の方から誰かが見ている気がします。
パッと天井の方を見ると、部屋に居てはいけない気配をヒシヒシと感じます。
それはまるで「この部屋から出て行け!」と言っているようです。
姿こそ見えませんが、今にも何かが起こりそうで私は怖くなり、部屋から出ることにしました。

その途端、ドンッと背中を押されたのです。
ビックリして後ろを振り向いても誰もいません。

そのうちに「いいお風呂だったね」と言う家族の声が廊下から聞こえ、その声を聞いた途端に全身から力が抜けて、その場に座り込んでしまいました。
その様子を見て、父親は「どうした?」と心配そうな顔をします。
「うん、大丈夫。なんでもない。」
先ほどの出来事を言っても信じてもらえないと思った私は、黙っていることにしました。

その後、家族とトランプで楽しみながら気分転換し、寝ることにしました。
フカフカの羽根布団の中へ入ると、あっという間に眠りにつきます。

深夜、私はなぜか目が覚めてしまいました。
案の定全身が硬直しており、金縛りという状態です。

部屋は真っ暗で、横に寝ている家族の寝息だけが聞こえてくる静かな部屋は、妙に恐怖が襲います。
このままでは何かを見てしまいそうだと、なんとか体を動かそうとしていると、天井の方に違和感を感じます。

「うわ、まずい!」

と思っても、目がうまく閉じれません。
そして…天井に大きな人の顔が浮かび上がっているのを見てしまい、私は気を失ってしまいました。

次に目を開けると
「大丈夫?ねぇ」
と家族が心配そうな顔で私を起こそうと、体を揺すっていました。
起き上がった私は、家族に深夜の出来事を話しました。

すると、父親が
「俺も見たよ。あれな、きっと落ち武者だよ。ここら辺は昔、戦がよく起きた場所なんじゃないかな。」
と言います。

家に帰ってから、その旅館の場所や周辺について調べてみれば、確かに戦で多くの武士が亡くなった場所であると分かりました。
あの天井に浮かび上がった落ち武者は、今でも成仏できずにこの世をさ迷い続けているのかもしれません。

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