恐怖の泉

実話系・怖い話「職員室の幽霊」

これは今から20年ほど前になるでしょうか。
当時高校3年生だった私は秋の中間テストを控えており、夜遅くまで近くの進学塾にて猛勉強をしていました。

夜の11時ごろ塾が閉じられたため、帰宅後に翌日のテストの最終調整をしようとしたのですが…そこで大きな問題が発覚しました。
なんと1限目に行われる英語のテキストがどこにも見当たりません。

恐らく学校の机の中に忘れたんだろうと直感しましたが、とても1人で取りに行く勇気などありません。
仕方なく親しい友達に無理を言って頼み込み、一緒に学校へ向かう事にしました。

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鍵のかかった校門をよじ登り、校舎の中に入って行くと、夜の校舎は想像していた以上に不気味な空気が流れていました。
季節はもう秋で、夜になると気温が下がっていたにも関わらず、廊下には生暖かくて重い空気が流れており、如何にも「出そう」と言った雰囲気。
私も友人もうっかりお化けを見てしまわないよう、視線を下げながら教室の方へと向かって行きました。

やっとの事で教室の前に着き、ドアを開けようとしましたが…なんと扉にも窓にも鍵が掛かっており、中に入れない状態になっています。
「夜になったら全て施錠されているのか。こうなったら怒られるの覚悟で宿直室に行くしかないなぁ。」
腹をくくり、1階の宿直室へ向かう事にしました。

1階に到着して宿直室へと向かいます。
そして職員室前を通過した時、電気のついていない部屋の中で何やら人がいる気配を感じました。

私は
「なぁ、今職員室で人が動いたような感じがしなかった?もしかしたらまだ先生残っているのかも…。」
と小声で友人に言うと、友人も人影が見えた気がするとの事。
職員室には鍵が掛かっていなかったので、こっそり月明かりを頼りに人影がいた方を覗いてみると…奥の机に女の先生が座っているのが見えました。

「あの~すみません。教室に忘れ物をしたんですけど鍵が掛かってて。お手数ですが鍵を貸して貰えませんか?」

そう話しかけると、その先生は椅子からすっと立ち上がりました。
ところが季節はまだ秋だというのに赤くて分厚い半纏を着込んでおり、髪はボサボサで顔色は真っ白。
何やらブツブツと話ながら私たちの方へゆっくりと向かってくる姿は、まさにお化けそのものでした。

私と友人はヤバイ!と直感して一目散に職員室から脱出し、隣の宿直室へ助けを求めるように慌てて駆け込みました。
その日は年配の用務員さんが当直で、私と友人は慌てながらも心を落ち着かせ、職員室での出来事を報告しました。
すると用務員さんは「またか」と溜息をつき、しばらく沈黙が流れた後、語って下さいました。

「今から30年ほど前の事なんだけどね。私もこの学校で教員をしていて、同期にとても熱心な女性の先生がいたんだよ。
生徒の為なら身を削ってでも頑張る姿勢だったんだけど、身体があまり丈夫じゃなく、よく体調不良で欠勤していてね。
そして冬休みに入る直前、突然無断欠勤が続くようになり、不審に思って彼女のアパートに行ってみたんだ。
すると彼女はコタツの中で、テストに丸付けをしようと赤ペンを握ったまま息絶えていたんだ。君達が言っていたように、赤い分厚い半纏を着た状態でね。
多分、彼女はまだ自分が死んだ事に気付いてなくて、自分の仕事を探し続けているんだろう。可哀想に。
私と彼女とは本当に仲が良かったから、今でも彼女を助けられなかった事を悔やんでいるんだ。
彼女の為にもこの事は、お化けが出たみたいに絶対に面白可笑しく他の人に伝えないでね。」

用務員さんの目にはうっすらと涙が浮かび、深々と私達に頭を下げてお願いしてきました。
そこまでされては私も友人も誰かへ喋る事は出来ず、友人と2人きりでも話題にしたことは無いです。

その後、校舎が取り壊されたため先生の幽霊がどうなったのか定かではありません。
何らかの形で救われて成仏してくれればと、願うばかりです。

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