恐怖の泉

人間の怖い話「勝手に動き出した車」

当時私はパチンコ店に勤めていました。
その当時は羽振りも良く勤めやすいパチンコ店で、1時間に1回休憩もありました。
シフトも9時から17時と16時から22時までと2つあり、自由時間は他の企業に比べると圧倒的に多く仕事がとても楽でした。

ですが、パチンコ店というのは様々な人が出入りします。
訳ありの人もかなり多くお客さんとして来ていましたが、そればかりではなく従業員の方も身分がよくわからない人が勤めていたのです。

私の先輩だった方は、元暴力団の組員で地方から逃げてきたそうです。
莫大な借金を抱えて、夜逃げしたまま勤務していた人もいました。

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ある時、有名な某ボーリング場を経営する親を持つ息子という方が入社してきました。
その人は、親が大きな企業の社長の割にそれらしくない風貌でした。
服装や髪は降り乱れたままでだらしなく、勤務態度も決して良くはありません。
性格も自分勝手で無断欠勤をすることも多々あり、とても信頼できるような感じではありませんでした。
そんなですからどんな仕事も長続きしなかったようで、ついにはそのパチンコ店もすぐ辞めてしまったのです。
私はその人が苦手と言いますか、若干怖いなと思うことがあったので、辞めてもらって内心ホッとしていました。

ところが、北海道へ社員旅行に行っていた際に事件が起きました。
私の所有する車が事故を起こしたらしく、突然警察から連絡が来たのです。

私は当時社員寮に入っていました。車も確かに所有しています。ですが頭の中は全く事実が飲み込めません。

私は今社員旅行中で、遠く北海道にいます。自分の車を運転できるはずがない。
なのに事故?一体誰が運転した?しっかりと鍵をかけていたのに…まさか泥棒が??
初めての北海道でとても楽しく過ごしていた一時から、奈落の底へ突き落されたような気分になりました。

とりあえず落ち着いて内容を聞いてみると、運転していたのはボーリング場を経営する、例の社長の息子だということを知りました。
ですが疑問が浮かびます。

私は社長息子と仲が良いわけではなく、仕事以外では交流を持っていません。
なぜ彼が私の車を運転できたのか、意味がわかりませんでした。

旅行から帰宅すると警察の方から、詳しい事故の内容が説明されました。
私の部屋は、勝手に合鍵を作られていました。
社員寮の食道は店舗の上にあり、私は貴重品をそのままにして店舗に行くこともありました。その隙に、社長息子は合鍵を作っていたのです。
合鍵で私の部屋に忍び込み、悠々と過ごした後に車を盗んで運転。幸いにも金品は盗まれていませんでした。
私の車で逃亡した後は、車で移動しながら生計を立てていこうと考えていたというのです。
さらには無免許運転。運転の仕方というのもいい加減だったのでしょう。
電柱へぶつかり、私の愛車は使い物にならなくなってしまいました。

また社長息子には全く返済する能力がなかった為に、最初は車に対する金銭的な責任も要求することができませんでした。
親が社長で、後に賠償を補填してくれたのがせめてもの救いでした。

この一件以来、私は鍵をかなり慎重に扱うようにしています。
色々な人が出入りする社員寮も恐ろしくなり、新たにセキュリティーが高いマンションへ転居しました。
世の中様々な方がいますが、この社長息子よりも破茶滅茶な人物を、私は知りません。

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