恐怖の泉

実話系・怖い話「山の中の貯水槽」

これは私が小学生5年生の頃の話です。
当時、私は山を切り崩して作られた新興住宅地に住んでいました。

塾に通っていまして、AちゃんとBちゃんと一緒に通っていました。が、私たちは塾をさぼって近くの山に入って遊んでいたのです。
山を切り崩して作られた住宅地だったので、すぐそばが山の入り口でした。

山の入り口には立ち入り禁止の看板があるのみで、誰でも簡単に入ることができるようになっていました。
細い道をちょっと進むと広場のようなところがあり、そこで枯れ草や枯れ木、段ボールなどを組み合わせて秘密基地のようなものを作りました。
お菓子や漫画を持ち込んでは、塾に行く時間にそこへ集まって遊んでいたのです。

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あるとき、さらに少し山の中の道を進んだところにある丘のようなところに登ってみようということになりました。
丘といっても人工的に作られたもので、階段もあり貯水槽が設置してあるだけ。特に何かがありそうには見えませんでした。
当時はデジタルカメラというものはありませんでしたが、Aちゃんが家からインスタントカメラを持ってきていました。
「残り3枚くらいだから使っていいって。」
お母さんの許しを得たというので、私たちはその丘に上り、急斜になっているところの階段を登りました。
階段といっても15段くらいのものです。登り終えると広場の真ん中に貯水槽があり、金網で囲まれて入れないようになっていました。

Aちゃんは記念にと、貯水槽の写真を撮っていました。
何もないのは知っていたのですが、一応広場をぐるっと3人で探索してみました。

広場の端まで行くと、木の影に何かがあったので3人でのぞいてみると、そこには小さな手作りのお墓らしきものがありました。
まだ新しいもののようで、掘り返した土の跡も残っていました。供えられている花もしおれてはいるものの枯れてはおらず、木の枝で作った十字架が、盛られた土の上に刺さしてありました。

私たちが遊んでいる間に誰かがお墓を作りに来ていたかもしれないと思うと、ちょっと気持ちが悪いなぁとは思いました。
ですが遊んでいるときには私たちの他に人影を見たことはなかったので、特に深く考えませんでした。

Bちゃんは
「猫か犬のお墓なのかな~」
と言いながらポケットに持っていた飴を花の横において手を合わせていたので、私とAちゃんもなんとなく真似をして手を合わせました。
さすがにそのままそこで遊ぶ気にはなれなくて、丘を降りて秘密基地に戻り、しばらく遊んでからそれぞれ家に帰りました。

その数日後、私たちは塾をさぼっていることが親に見つかり、その秘密基地には行かなくなりました。
仕方なく真面目に塾へ通っていると、Aちゃんが現像した写真を持ってきました。

写真を見るなり、私とBちゃんは
「わあ!心霊写真だ!」
とおもしろがってしまいました。

写真には、誰もいるはずもない貯水槽の金網の中に白い人影が2人写っていたのです。

見た感じ、男の人と髪の長い女の人のようでした。下半身は写っておらず白いぼやっとした影で、顔の表情もよくわかりませんでした。
かろうじて目鼻口があるのがわかる程度でした。

それから1ヶ月後くらいに、近所の若い夫婦が心中したという話を聞きました。
その心中事件はローカルニュースでも流れたそうです。
その若い夫婦には2歳くらいの小さな子供もいたそうですが、山中に埋められているのが発見されたそうです。

私はなにしろ小学5年生と幼かったこともあり、その事件と自分たちの体験したことを結びつけることはなく、時が流れました。

大人になってから同窓会があり、久しぶりにAちゃんBちゃんと再開しました。
そこで3人で塾をさぼって遊んでいた話になった時、Aちゃんが
「そういえば心中事件があったでしょう?」
と話しはじめました。

Aちゃんの話によると、山中に埋められている幼児が発見された山は、私たちが遊んでいたあの山なのだそうです。
お墓がその子のお墓だったのかどうかまでは分かりませんが…心霊写真に写っていた2人の人影も、もしかしたらその夫婦だったのではないかということを話してくれました。
意図せずにその現場にいたのだと思い出してみると怖くて、しばらく夜の寝つきが悪かったです。
心中で亡くなられた家族には、どうか天国で幸せになっていて欲しいです。

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