恐怖の泉

実話系・怖い話「宗教施設での奇妙な体験」

これはとある宗教施設に3ヶ月ほど滞在していた時の話です。

その施設は鉄筋の4階建てになっていて、過去に男性が飛び降り自殺をしたという物件でした。
宿泊施設なので管理人、世話係がそれぞれいまして、世話係が食事の準備やお風呂の用意、夜回りなどを担当しています。
宗教関係施設ということで病気の人や様々な問題を抱えた人が多く利用していました。もちろん普通の人も居ますが。

その自殺されたという方も多分に漏れず、精神病を抱えていて独りでは危ないという事で、母親と一緒に生活をしていたそうです。
しかしお昼時に一瞬目を放した隙に、4階まで行って飛び降りたそうです。
惨い話ですが「ぐしゃっ」という鈍い音が聞こえ、それは酷い有様だったのだとか。しかも病院に運ばれるまでは命があり、その後に亡くなったという話です。すぐに楽にはなれなかったというわけです。

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私達がその宿泊施設を利用したのは、その事件があってから3年ほど経っています。
当時10人ぐらいで2階に寝泊りし、世話係として部屋の掃除から廊下、トイレと全てを皆で手分して担当していました。
いわゆる旅館とほぼ同じ仕事内容ですが、そういった業務も精神修養の一環と昔から決められているのです。

昼間は学校の様な施設で宗教に関する授業を受け、夕方に宿泊施設に戻り、施設内で宗教で使用する楽器の修練などを夜まで行うという毎日でした。
比較的夜の時間は自由になる為、ほぼ毎晩の様に皆で集まっては晩酌になっていました。

ある時、管理人さんが参加する形の飲みの場で、夜回りの際に4階の部屋に灯りが付いていたことがあり
「消灯時間ですのでお休みください。」
と声をかけに行ったのですが…後で事務所で確認した所、誰も4階には宿泊していない事実が判明しゾッとしたという話を聞きました。
他にも何人かは幽霊らしきものを感じたと聞いていましたが、この管理人さんの体験が一番はっきりした体験談でした。

そしてある日、私と仲の良かった先輩のKさんが、いい加減飲んだ所で
「俺は霊感があるから、その霊を呼び出してやる」
とか言い出して、酔った勢いで4階へ2人で上がって行く事になりました。
そして自殺者が飛び降りたと思われる部屋に2人で入り、Kさんが何やら合掌したまま「イタコ」よろしく身体を震わせて「霊よ降りて来い~」的な事をやり始めました。

Kさんは大変面白い人です。今時の「お笑い芸人」を地でいくような人で、彼の周りはいつも笑いが絶えませんでした。
しかしちょっと軽薄で若干胡散臭い所もあり、私は彼の霊感が強いという話は全く信じていませんでした。
しかも酔った勢いでこんな遊び半分な事をしたら絶対罰が当たるか、何か良くない事が起るのではないか?と思っていました。
いや、ある意味それを期待していたのかもしれません。

その部屋はベッドが上下2段になっていて、小さな窓が下にあります。その窓の所にこれまた小さなカーテンが付いています。大きさはさしずめ、縦40cm横70cmぐらいでしょうか。
夜2時ぐらいから、明け方近くまでの長い間その場に居たと思います。

相も変わらずKさんはぶるぶると手を震わせていたのですが、期待したような事は何も起きません。
「やっぱりな~ホントこの人胡散臭いわ~。でも面白いわ~。」
私もあまり深刻には考えず様子を見ていたのですが…。

「あっ、カーテンがっ!」

Kさんが突然、小窓の方を指差しました。
驚いて何事かと指差す方を振り返ると、カーテンがゆっくりと横に動いています。

もちろん他には誰もいないし、窓も開いていないので風もありません。勝手にカーテンが動く筈はないのです。
カーテンは確実にゆっくりと、横に動いて行きました。
ちょっとだけ「ゾクッ」としましたが、その動きもしばらくして止まり、それ以上の事は何も起きませんでした。

明け方になって諦めた私たちは、部屋に戻って寝てしまいました。

期待した様な事が起きずがっかりしたというかホッとしたというか…。微妙な気持ちでしたが、果たしてあれが霊現象だったのかどうかはよく判りません。
ただその何年か後にKさんは精神を病んでしまい、未だに入退院を繰り返しています。それがこの事と関連するかどうかも、私には不明です。
ですがはっきりいえる事は、面白半分でこういう行動を取ると後々、悪い事が起きるのは間違いないと思います。
これが、私が唯一体験した怖い話です。

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