恐怖の泉

実話系・怖い話「家の階段」

これは私がまだ小学生の頃の話です。
私は小学生の頃、自宅の階段の最上段によく座っていました。

別にその場所が好きだったわけでもなく、自分でもなんでそこによく座っていたのか今でも分かりません。
なんとなく分かるのは、何故かそこに座らなくてはいけないというような感覚に襲われていたという事だけです。

朝や昼、夜など時間は関係ありませんでした。
遊んでいる途中・家族とTVを見ている途中などそういったことも関係ありませんでした。
ふと思い立ち何故か階段の最上段に座るのです。

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しかし、必ずその階段の最上段に座ると決まって私は階段から転げ落ちるのです。
私自身が覚えてる限りでも1回や2回という頻度ではありません。
転げ落ちれば子供ですので、痛くて泣きますしびっくりもして声も上げます。
それでも何度もそこに座っていました。(なぜ親が止めてくれなかったのかとも思いますが…)

転げ落ちていたのは、私がバランスを崩して落ちるのではなく明らかに背中を押されて転げ落ちるのです。
背中をドンッ!と思いきり誰かに押されて落ちます。その押される感覚は今でもしっかりと覚えています。
でも、見ても誰もいないのです。
逃げたりとかそういうことではなく、落ちる直前まで後ろに人がいる感覚や足音なども一切聞こえないのです。

私には兄が一人いるのですが、当時は兄がいたずらで私を落としているのだと思っていました。
が、実際に兄がやっていたことならば親が何も言わないという事はありえないし、流石に同じ子供だったとしても、兄の歳であれば階段から落ちたら危険だというのは分かっていたはずです。

母に何度か
「どうしてそこに座るの?」
と聞かれたことがありますが、私はその質問の意味が理解できませんでした。
自分はここに座らなければならないから、としか思えなかったのです。

ある夜、母が一階で晩御飯の片づけをして兄と父が二階でTVを見ていました。
私は途中まで父と兄と一緒にTVを見ていたのですが、突然「階段に座らねば」と思い階段に座りました。
そして、母がいる一階の明かりを眺めながら兄や父の話声・笑い声、TVの音などをボーっと階段に座りながら聞いていた時、いつものごとく背中を押され、私は階段を転げ落ちました。
恐らく、ものすごい音がしていたと思います。
この時あまりにびっくりした私が泣くことも忘れて
「お兄ちゃんがやったんだ!」
と思い階段を駆け上がり兄と父がいる居間へ行き
「どうして背中押したの!?怪我しちゃうでしょ!」
と兄に怒鳴りました。
しかし、兄も父も何を言ってるんだこいつは?というような顔をして父が
「兄ちゃんならずっとお父さんとTV見てたけど…」
と言うのです。

私の背中を押せたとしたら二階にいた兄と父のどちらかしかいないのですが、確かに落ちる寸前まで兄も父も遠くで話している声が聞こえていました。
私もどういうことなのか?と初めてこの時疑問を持ちました。
しかも、その時いくらTVを見ていたとはいえ子供一人が階段から落ちたら音で気づくはずです。
しかし、私が怒鳴りに行くまで二人とも気づきもしていなかったのです。
私は二人に、背中を押されて階段から落ちたのだと一生懸命説明しましたが、二人とも終始キョトンとして「?」というような感じでした。
あの後、何度兄に「あの時階段から落としたのはお兄ちゃんでしょ?」と聞いても当たり前ですが「ちがう」としか言いません。

幸いなことにその話を家族にしてから、私が階段へ座るという事は減っていきました。
いつの間にか「座らなければ」という感覚に襲われることも無くなりました。
今でも、誰が背中を押していたのかは分かっていません。

もし、あのまま座っては転げ落ちるという事を繰り返していたら私はどうなっていたのだろう…とたまに思ってしまいます。
怪我をしていたであろう事はもちろんですが、私はあの当時この世の者ではない存在に魅入られていたのでは…?ともしばしば思います。

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