恐怖の泉

実話系・怖い話「林間学校の怪」

小学生の頃の話。
僕の学校では5年生は林間学校として、山のキャンプ場に一泊二日で泊まる事になっていた。
カレーを作ってキャンプファイヤーのそばでマイムマイムを踊り、夜中はコテージで寝て翌日は帰るだけ、という簡単なものだ。

だがうちの小学校では、運動会より授業参観より嫌われる行事が、この林間学校だった。
というのも、毎年必ずと言っていいほどこの林間学校で体調不良者が出るのだ。

林間学校は山の中にあるオンボロなキャンプ施設を毎年利用していたのだが、夜寝ている間に体が動かなくなる生徒や、嘔吐してしまう生徒、悪寒を感じる生徒などが続出した。
慣れない環境での体調不良を疑い、先生たちが用意する「林間学校のしおり」には体調不良にならないためには、なった時の対応は、等とかなり丁寧に指導を続けたが、効果が出る事はない。
体調不良者の中には保健室を一度も使ったことがない生徒や皆勤賞を取るような生徒もいて、熱もないので先生たちは首をかしげるばかりだった。

聞いた話では、体調を崩した生徒は皆、寝ている間に激しく取り乱したりうなされたりしていたらしい。

スポンサーリンク

6年ほど同じ宿泊施設を利用していたが、保護者にも心配する声が増えてきていた。
さすがにこれはまずいと、僕たちの代の林間学校で遂に宿泊施設を変更することになった。
そこは新しく出来たばかりの海にあるキャンプ場で、設備もキレイだと聞いていた僕たちは大喜びしたものだ。

6年間絶えず続いた林間学校の怪奇現象は、学校内でも当然のように先輩から後輩に語り継がれていた。
しかし今回は場所も新しいし、海だ。山育ちの僕たちには海は珍しいものだったし、それになにより正体不明の怪奇現象から解放されるのではと期待したのだ。

案の定、新しい施設での宿泊をそれは楽しいものだった。
食事もとても美味しくて、どの設備もぴかぴかだ。泊まる施設も丸太で作られたログハウスに清潔なベッドが置いてあり、キャンプファイヤーから帰った僕たちは大人ぶって好きな人について語り合ったりして満喫していた。
誰もが、僕たちの代では怪奇現象に遭う事はないと信じていた。

ところが、消灯してみんなが眠りについた頃にそれは起きた。
まだ携帯も普及しておらず、ログハウスは真っ暗で電球のあかりしかなかったので時間はわからないが、まだ真っ暗だった。
一人の生徒の寝ているベッドが、地震でも起こっているのではないかと思うほど小刻みに震えだした。
ガタガタガタとなる音に目を覚ました数人の生徒が起き出したようだ。かくいう僕もそうだった。
だが、あまりに異常な光景に身動きを取る事が出来なかった。

ベッドの上の生徒は目を閉じて眠っているように見える。表情もやすらかな寝顔のままだった。
ただ、やすらかな顔のまま口からは泡を吹き、手足が小刻みに揺れ続けているのだ。

しばらく何も出来ずベッドから隠れるようにその光景を見ていたが、ふと震えが納まった。
震えていた生徒は何事もなかったように眠り続けていたが、口から出る泡だけが異様な光景だった。

目を覚ました僕たちで相談して先生を呼びに行ったが、先生のログハウスは電気がついていてざわついていたそうだ。どうやら同じような目にあったログハウスが他にもあるらしい。
その後、その生徒達は念の為医務室に運ばれたが、何の異常もなかったらしい。

結局、環境が変わった僕たちの代でも、林間学校での怪奇現象からは解放されることがなかった。
生徒達の間では、林間学校を楽しみにしていた生徒が直前に亡くなってしまって、僕たちが林間学校にいくのについて来ていると噂されていた。
僕の父は当時教員にとても近いところで仕事をしていたので聞いてみたが、そんな事実はないそうだ。
先生たちの間でも、林間学校での怪奇現象の原因となる出来事に心当たりはないようで困惑していたらしい。

その後三年ほど、新しい施設での林間学校は行われたが結局怪奇現象が止まる事はなく、林間学校は廃止された。
あの怪奇現象は一体何だったのだろうか…。

スポンサーリンク

TOP