実話系・怖い話「チョコレートのお礼」
ある雨の日、小腹が空いたのでコンビニに食べ物を買いに行った。
以前は自炊だのなんだのと張り切っていたが、一度自堕落な生活に慣れてしまうと毎日自分のために飯を作るよりも、一食ごとに買いに行った方が楽だと感じるようになってしまう。
実際後片付けしなくて良いことを考えると、楽なんだけどな。
雨の日を嫌う人は割と多いが、逆に好きな人もいると思う。
私も雨の日は好きで、朝目覚めた時に雨音が聞こえていると浮かれた気分になる。
いつものコンビニでおにぎり数個とお茶、あと今流行の妖怪ナンチャラが出している、チョコ菓子を数本買った。
それまでにも何度か買っており、なんとなく気に入って食べている。
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水たまりを避けながら、すっかり綺麗になったゴミ集積所を通り過ぎ、自宅への道を急いでいると前方の水たまりに何やら黒い物が蠢いているのに気付いた。
動物の飛び出しが多い地域なので、イタチか何かの死骸かと思って素通りしようとするも、そうではないようだった。
気になると確かめずにはいられない。
この好奇心がいつか命取りになる様な気がしないでもないが、迷いなく水たまりに近寄った。
一掴みの粘土のような物が、水の中で鈍く動いている。
以前に動画で見た水銀のようにも見えるが、それは黒色をしており、表面はドロドロしたような印象を受けた。
近くに落ちていたアイスの棒でつつくと、塊の中から細かな触手のような物が数本出て来て、しばらくアイスの棒を触っていると急に音を立てて棒が折れた。
おお怖い。
怒らせたかなと思い、ご機嫌取りのために例のチョコ菓子を与えてみた。
包装をといて、チョコ菓子の部分を黒いのに押しやると、棒の時のように触手が現れしばしチョコを触ると、固まり全体が一本の触手になりチョコを持ち上げた。
そしてガリガリと音がして、塊に触れている箇所からチョコが小さくなっている。
食ってるのか?
しばし見ていると、チョコはすっかりなくなり、触手は物足りなさそうにしている。
もう一本食うかと与えてみると、今度は警戒せずにチョコを受け取り、またガリガリと食べた。
ちょっと可愛いなと思い始めた頃、チョコを食べていた箇所と思われるところから、ぶっと何かを吐き出してきた。
手に取ると、六ミリほどのくすんだ赤色の丸いビーズの様な何かで、金属のようでもあり、粘土のようでもあり、ガラスのようでもある。
触手はウネウネと身を捩ると、そのまま地面に溶け込んでいった。
何だかよく分からないが、奴なりのお礼だろうと解釈してもらっておいた。今では加工してピアスになっている。
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