実話系・怖い話「塾の庭で」
オバケとか妖怪とか、イマイチ区別はつかないんだけど、そう言えば小学生の頃にあれは何だったんだろうなってのを見た。
小学校六年生の時だったと思う、冬休みが始まる前くらいだったかな。凄く寒くて、すぐに暗くなるようなそんな季節。
当時は親の付き合いか何かで個人経営の塾に通わされてた。
自転車で十分ほどの所にあって、その辺りでは珍しく大きめな敷地に、和風な庭と家があった。武家屋敷と言うには規模が小さいけど、庶民の家と言うにはちょっと大きいみたいな。
大きな門があって、庭を抜けてようやく玄関につく。その庭の一角に駐輪スペースがある。
オレはあまり頭が良く無くて、毎回遅くまで残されちゃうんだけど、その日はいつもより遅くなって十九時近くになってたかな。
あたりはもう真っ暗、庭にいくつか照明はあるんだけど、照明同士の間隔が広いとその間は余計に暗く見えて怖い。
さっさと帰ろうと自転車の鍵を刺そうとするんだけど、暗くて鍵穴が良く見えない。
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しばらく感覚だけでガチャガチャやってたら、庭の照明が一瞬消えたんだよ。
びっくりして見てみたんだけど、どれも消えたような感じも、消えるようなチカチカした感じも無い。
徐々に怖くなってきて、早く早くって思うけど、焦ると余計に手元が狂って鍵がささらない。
そうしてるとまた照明が一瞬だけ消えた。それが続けてついたり消えたりする。
そのとき何故だか、照明が明滅してるんじゃなくて、明かりの前で誰かが立ったり退いたりして明かりを遮ってるんだって考えちゃった。
有りもしない事だとしても、いっぺんそんな想像をするともう怖くて仕方ない。
金縛りにあったみたいに体が動かなくなるんだけど、手はメチャクチャぶるぶるしてて、ちびりそうだった。
そうこうしてると塾の方から先生が懐中電灯を持って出て来てくれた。大人が居てくれるってだけで凄く安心した。
それでやっと自転車の鍵をさして、改めてさようならって自転車に乗って門から出たんだよ。
ふと気になって振り返ったら、門の上に何か居る。
真っ黒い陰で、人が蛙の真似してしゃがみ込むみたいにして座って、すっごい上半身揺らしてた。
怖くなって全速力で自転車こいで家帰って、着くなり吐いた。
それから塾に行くのが嫌になったけど、そんな話をしても信じてもらえなくて結局通い続けることになった。
でもそれ以降黒い影を見るようなことは無かったし、小学校を卒業するころに引っ越したから今まで忘れてたんだけど。
あれは何だったんだろう?
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