恐怖の泉

実話系・怖い話「防空壕の近くのお墓」

私が小学生だったときの話です。当時住んでいた実家の近くには山の中に設置された防空壕がありました。
防空壕とはいっても通常の行き止まりのものではなく、トンネルのような構造のものでした。

入ったことのない人はどんな感じが分からないと思いますが、防空壕の中はとにかく「真っ暗」なのです。
下を向いても何も見えず、上を向いても何も見えず、ただただ前方と後方に入り口と出口の「点」のような光が見えるだけです。
そしてその近くには「お墓」がありました。
防空壕とは関係がないようで、田舎によくある町内別に設置されているようなお墓です。

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とある日、私たちは小学校の休み時間にある噂を耳にしたのです。
夜中になるとそのお墓に、1つ上くらいの学年の女の子が現れるらしいのです。
その子はとても可愛らしい容姿のようなのですが、話しかけても喋らずどこかへ消えていくという噂でした。

当時の私たち男子は好奇心旺盛でしたから、その噂を聞いた日の翌々日の土曜日の夜に、早速そのお墓に行ってみることにしたのです。

そもそも私たちは、そんな夜中に子ども達だけで外に出るなんてことなかったですから、ただお墓に向かっているだけでとても怖い思いをしていました。
そして到着するとみんなで「ホッ」としました。そこには誰もいなかったのです。

しかしとある子が「少し待ってみようぜ」などと迷惑なことを言い出しました。
みんな子どもながらに「プライド」を持っていたからか、臆病だと思われたくないので誰もその提案を拒否しませんでした。

しばらく座って待っていると、私たちの方に向けて足跡が聞こえてきました。
前日の雨でぬかるんだ土道を、一歩一歩誰かが踏みしめて迫ってくるのです。

その足音の主が見えるか見えないかのときに、仲間の一人が山の奥へ逃げ出しました。防空壕の方です。
その一人に釣られてなだれ込むように、私たち全員が防空壕の中へ入っていきました。

前方にある「点の光」を頼りに平衡感覚を保ちながら必死に走っていきます。
ヘビがいるかもしれない、イノシシがいるかもしれない、などという不安を抱きながら必死に走り続け、無事に防空壕を出ることができました。

そして私たちは後ろを振り返りました。
すると、点の光の中に人間の走る姿のシルエットが写っているのです。徐々にこちらに向かって進んできているように見えます。
私たちは叫び、歩行道じゃない険しい道を使い山を駆け下りていきました。そしてそこから一番家が近い友人の子のところに逃げ込んだのです。

はたしてあの時、お墓に来たのは噂の女の子だったのでしょうか。そしてあのシルエットは一体…。
大人になった今でも、時々気になっています。

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