恐怖の泉

実話系・怖い話「真夜中の親子」

梅雨時のある日の深夜2時、僕が布団に入ってすでに2時間が過ぎようとしていた。
家はマンション街にあるマンションの1階。枕は窓側に置いてある。外は雨が降りしきっている。

なかなか眠れなかったのでボーっとしていると、遠くからヒールをかたかたと鳴らしながらベビーカーを押している音が聞こえた。
赤ん坊は大きな声で泣き叫んでいる。
「こんな真夜中なのにどうしたんだろう」程度に考えていた。

次の日も眠れずにいると、その親子は同じ時間に歩いているようだ。
昨日よりも更に赤ん坊の泣き声は大きかった。雨もまた強い。
遠くから聞こえていたヒールの音は徐々に近づき、窓の近くに止まった。
窓の外には少しばかりの庭がある。そして柵があるのだが、窓をノックする音が聞こえた。

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「そんなバカな!」
と恐怖で頭がパニックになる。
窓を彼女がたたきながら優しくこういうのだ

「開けて、開けて」

しかしそんなことを言われても、開けてあげようとすらもちろん思わない。
その親子からは、人間ではない雰囲気を感じていた。

しかしそんな僕にはお構いなく、たたく音が強まっていく

「ドンドンドンッ!!」

しばらくその状態が続いていたが、やがてその音が鎮まった。
いなくなったのか?と少しホッとした矢先、女性とは思えないほど低く、心臓がえぐられるかと思うほどの威圧感で一言
「開けろ」

僕は開けることなくじっとしていると、またヒールの音をかたかたと鳴らしながら歩いていった。

次の日、今までの時間を過ぎてもヒールの音もベビーカーの音も聞こえずだったので安心していた。あれは一体何だったのか…。

そしていつもの時間から30分後ほど経ってからだろうか。一台の救急車のサイレンが鳴り響いた。
マンション街で通るはずのない道路を通って僕の家に近づいてくるのが分かった。
そして前を通り過ぎるときに確かに聞こえたのだ。あの威圧感を持った声で。

「お前のせいで、死んだから」

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