恐怖の泉

実話系・怖い話「むかさり」

今から30年程も昔になるでしょうか。
私はまだ夫婦生活を始めて間もない頃で、子供も生まれ慌ただしい日々を過ごしていました。

「ちょっとお願いがあるんだけど…」

近所に住む私の母から電話がありました。
一体何があったのかというと、警察から連絡があったので明日、一緒に来てくれないかというのです。

なんでも身元不明の故人がいるらしく、遺品から私の実家の住所やら連絡先、家族の名前まで記載された物が発見されたので確認して欲しいのだとか。
ところがその時点で、私の身内で連絡が取れない人は誰一人居らず、混乱が起きます。
とりあえず明日、近くの親戚も一緒に行くから皆で確認してみようと話がまとまりました。

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翌日、集合した私達が見たのは、全く見ず知らずの中年男性の亡骸でした。
年齢は50代くらいでしょうか。親族全員がその方の顔や居住地を確認しましたが、やはり誰も心当たりがありません。
死因は恐らく心不全、発見場所は部屋の布団で事件性も無く、病死だろうとのことでした。
その方の遺品には身元が分かる類は全く無し。名前も偽名で定職に就かず転々とした生活をしていたようで、どこの誰か全く分からない。
唯一、手掛かりらしきノートが開かれて枕元にあり、そこに「ここへ連絡して」という文言と共に、私の実家の情報と家族の名前が記してあったのだそうです。

実際に警察から見せてもらうと、そのノートは表紙が赤く塗られていて、手にするのも躊躇する気持ち悪さがありました。
恐る恐る開いてみると確かに私達家族の記載があります。私の名前もあり、なぜこの人は私達家族を知っているのか考えると…体に悪寒が押し寄せます。
気味が悪いので、あとは警察にお願いします、とだけ言って私達は帰宅しました。

警察の方でもいろいろと調べてくれた結果、私達とは何の関係もない赤の他人だと納得してくれました。
その後の事は、私には分かりません。

月日は流れ、私も50代となりました。
上記した出来事など全く忘れていたのですが、ある事がきっかけで思い出しました。
突然、その謎の人物が夢へ出てくるようになったのです。

どういう夢かというと、私は何もない殺風景な部屋に居ます。出入口となるドアは1つしかありません。
部屋の奥には、横たわったまま身動きしない、あの日亡くなった謎の人物の亡骸がポツンと置かれているのです。
私は気味が悪いのでドアから出ようとするのですが、どうやっても開かずにもがいていると目が覚める、という夢です。

何故かそんな夢を何度も見ていて、ある変化がある事に気がつきました。
夢を見る度、部屋が狭くなっているのです。

部屋が狭くなると、謎の人物との距離も近くなっていきます。
今では亡骸との距離もかなり近く、顔がはっきりと認識できる程です。これがまた恐怖で、私は寝るのが毎晩恐ろしくてたまりません。
家族に相談しても、夢なんだからと全く相手にされず。確かにただの夢ではあるのですが…言いようのない予感、不安を抱えているのです。

この夢を見続けてしまったら、私はどうなってしまうのでしょうか?
そのうち謎の人物が目を開けて、こっちへ迫ってくるのではないかと考えると気が気ではありません。
この人物は一体何者で、なぜ私がこんな目に遭わなければならないのでしょうか…。

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