恐怖の泉

後味の良い怖い話「家族のパワースポット」

オレの妻は、他人のオーラや幽霊が見えるらしい。
そうは言われても確かめようが無いから今でも半信半疑なんだが、そんな妻が言うには
「オレ君の実家はヤバい。」
のだそうだ。

実家にはオレの母親、父親が住んでいる。猫も2匹いる。
兄と弟も居たのだが、オレよりも先に結婚して家を出て、最後に残ったオレも最近結婚したのでもう親だけになった。
実家で同居も考えたが、うちの親父はなかなかの曲者なので、それが理由で断念した。
とは言ってもオレは実家から徒歩圏内で新生活を始めたから、あまり実家を出たという感覚は無い。
共働きで忙しいし、お金も浮くからと思って頻繁に実家へ夜飯を食いに行っていたから尚更だ。
しかし妻はそうでは無く、別の理由で実家に行きたがっていたようだった。

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「オレ君のお母さん、オーラが他の人とは違うのよ。」

妻が言うには、母ちゃんは基本的に癒し系の良いオーラ。それ自体はよくあるのだが、特殊なのが他人へ分け与える事が出来ているようなのだ。
母ちゃんは食べ物を振る舞うのが好きなのだが、それと同時にオーラも分け与えているらしい。
微量なのだが、それでも与えられた人は負のオーラが薄くなって綺麗になるのだとか。

母ちゃんは姉御肌というか、面倒見が良い人だ。
世話焼きなのか、はたまた母性が強いのか。奉仕の精神が板についていて損得感情が微塵も無いようだ。なので関わっていると気持ちが良いし、その姿勢は心底尊敬している。
仕事も保育関係をしているし、歳を感じさせない程パワフルだ。
性格も明るくさっぱりしていて誰でも受け入れる。関わった人は必ずと言っていい程、実家を訪ねに来る。
ひょっとすると、人が集まるのもオーラに引き寄せられているのだろうか。

そんな母ちゃんだから、実家は常に何かしらの動植物を育てている。そしてなぜかサイズが軒並みに大きい。兄と弟も、世間一般の男性からして大柄だ。
同じく育てられたオレだけは何故か普通の体格だが。
動物では猫が不思議と寄ってきて、不在だった時期が無い。今居る猫も拾った子達だ。
先代の猫は、更に前に飼っていた捨て猫の子供だった。7kgと比較的大きな黒猫で20年生きた。

猫や人間等の動物が大きくなるのは理解できる。
なぜなら母ちゃんの出す食事は量が多い笑
しかし手入れをしているとはいえ、特別な事をしていない植物も大きく育つとなると、何か他の見えない要因があるのは確かなのかもしれない。

そういえば母ちゃんは若い時、簡単そうだという理由で売り子の短期アルバイトをやった事があるらしいのだが、記録的な売り捌きをして特別報酬を貰った事があるらしい。
正社員として働かないか、とも誘われたらしいが、進路が決まっていたので断ったのそうだ。
食べ物を提供するのが好きな母ちゃんらしいな、と思っていたエピソードだったが、ひょっとしたらオーラの影響があるのだろうか。
これもオーラと関係があるのか分からないが、亡くなった祖母は母ちゃんの成人式の時の写真が大のお気に入りだった。
「これ見ると、不思議と元気が出るんだ。」
そう言って大事に持っていた。

この前は母ちゃんの誕生日だったから、皆でお祝いしに集まった。
到着すると既にテーブルへ乗り切らない手料理を母ちゃんが作ってくれてて、お祝いしてるんだかされてるんだか分からない状況だった。
準備大変だったね、ありがとうと主役の母ちゃんに感謝を伝えると、皆が集まったんだから私が作る!と言い張ってた。流石はうちの母ちゃんだなと思った。
ただ、皆が料理を持って来ると知っていたのに手料理も作るのはやり過ぎな感じもある。その夜は人生で1番に腹がパンパンになった。

有名なパワースポットは旅行で人気だが、オレの家族のパワースポットは間違い無く母ちゃんだ。

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