恐怖の泉

実話系・怖い話「お地蔵さんの修理」

私の父方の実家は人里離れた山中にあり、祖父母が暮らしていました。
祖父は石屋と呼ばれる仕事をしていて、村の墓石や石碑は全部祖父が作った物だと聞いています。
祖父は自分の腕をとても自慢に思っていたようで、遊びに来た私達をよく散歩に連れ出しては作品を見せて回っていました。

中学生の夏休みに、久しぶりに祖父母の所へ帰省した時の事です。
家の離れに新聞紙が敷いてあり、その上に見慣れない小さなお地蔵さんが置いてありました。
私が祖母にこのお地蔵さんは何かと尋ねると、村の商工会議所近くにある御社の中にあったお地蔵さんなのだそうです。
村の高齢化に伴いまともに管理がされていなかったせいか、確認しようとした際にお地蔵さんの腕が割れてしまい、それを見た祖父が修理の為に許可をとって自宅に持ち帰ってきたとのことでした。

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私は祖父の仕事を見たことがなかったので、その様子に興味津々となり離れへ入り浸りました。
祖父はお地蔵さんを丁寧に乾いた布で拭き上げ、欠けた破片も同じように丁寧に綺麗にしていきます。
お地蔵さんの左腕は既に欠けて地面に落ち、右腕もヒビが入って今にも取れそうな気配です。

「右腕を補強するか」
そう言って祖父は接着剤のようなものを作り、それを塗ろうとお地蔵さんを持ち上げた時です。
ビシッという音と共に、お地蔵さんの腕が外れてしまいました。
思ったよりも傷みが激しいからセメントで固めた方が良いとの事で、そこで作業は終わりになりました。

その日の夜から、祖父の様子がおかしくなりました。
ずっと右肩が凝ると言い出し、違和感を感じるのか常に右肩を回しています。
肩が凝ったなんてセリフは、祖父から初めて聞いたと祖母は言っていました。

次の日、祖父の様子がさらにおかしくなりました。
右腕の感覚に違和感があり、動かしづらいと言うのです。
心配した父が祖父を病院に連れていき、いろいろ検査をしてもらいましたが異常は見つかりません。
しかしその後も悪化し、とうとう祖父は右手の指先まで痺れで動かせなくなりました。

さすがに明らかな異常があるということで、再び病院で脳梗塞の可能性なども含めて検査してもらいましたが、それでも異常無し。
祖父がそんな調子でしたので、お地蔵さんはすっかり忘れられていましたが、数日経った頃に祖父が「お地蔵さんをそのままにしておくのはかわいそうだ」と言い始めます。
仕方が無いので、私と父が祖父から指示を受けながらお地蔵さんを修理しました。

お地蔵さんの取れていた両腕はきちんと付き、元の形にはなったので、元の御社にお返ししました。
するとその日の夜、祖父の右腕が何事もなかったかのように治り、動くようになったのです。

私たち家族は驚き、祖父の右腕の異常はお地蔵さんの祟りが原因なのではと話題になりました。お地蔵さんが祖父の好意を勘違いし、傷つけられたと勘違いしたのではないかという訳です。
その後、きちんと修理して元に戻した結果、お地蔵さんの怒りも解けたのだと思います。

あくまで憶測でしかありませんが、そうとでも考えなければ祖父の異常は説明がつきません。
この出来事以来、何となく私はお地蔵さんを怖いと感じてしまいます。

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