恐怖の泉

実話系・怖い話「生活感のある廃墟」

若い時に、友人と肝試しに行った時の事でした。
そこへは遊び半分な感じで行き、幽霊とか全く信じていませんでした。

そこはずいぶん前に廃墟となった場所で、噂によると父親が多額の借金で首が回らなくなり家族を皆殺しにして、自分も自殺したとのことです。
そういった類は信じていなかった私たちでしたが、その場所に着くとなんだか嫌な雰囲気がたちこめていました。

中に入ると、布団や食器類が沢山あって生活感があり、子供の落書きなどもそのままでした。
流石に気味が悪くなってきたのですが、そのまま進むと浴室に着きました。物凄いボロボロで、水がほんの少し垂れているのが怖かった記憶があります。
すると友人が「変な声が聞こえる」と言うので、ますます恐怖が倍増しました。

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耳をすましてみると、奥のほうで確かにトントンと音が聞こえてくるのです。何の音かと思い、皆で恐る恐る奥の部屋へ行くのですが…当然そこには音が出そうなものはありません。そのうち音も消えていました。

「なんだ、何もないじゃん…」
と思って、その部屋を離れるとまた

「トントントン…」

音が聞こえてきました。
その音はまるで、お母さんが包丁で何かを切っている時の「トントン」という感じの音で、皆でこれはヤバいと思って帰ろうとしました。
すると今度は

「待って…助けて…帰らないで」

と声が聞こえてきました。
友人たちにも聞こえていたようで、一瞬にして場が凍りつきました。

走って玄関に行くのですが、扉が開かなくていました。すると後ろの方で
「待って…助けて…」
どんどん声が近くなってきたのです。
あ~もうダメだと思ったその瞬間、玄関のドアが開き一目散に逃げ出しました。

幽霊は本当にいるんだと確信した私たちは、二度と肝試しはしないと誓いました。もちろんこの廃墟にも、その後近づいていません。

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