恐怖の泉

実話系・怖い話「最後の挨拶」

先日、私の兄が他界しました。

兄は真面目で几帳面な性格でしたが、その気が強すぎたのか社会へ馴染めずに長い間、実家で引き籠りのような生活をしておりました。
両親が健在だった頃はまだ良かったのですが、親が亡くなってからは実家全体がゴミ屋敷状態になり、家を出た私と姉で様子を見守ってはいたものの変化は見られませんでした。
そんな兄は晩年に体調を崩して入退院を繰り返しており、とても辛そうでしたが、様々な意味でやっと楽になれたのかなと考えてしまいます。

お葬式も無事に済ませ、生活も落ち着きを取り戻したなと思った矢先、我が家に怪奇現象が起きました。

「おい、これ何の音だ?」

明け方の4時頃、夫の声で目が覚めました。
家のどこかでメロディが鳴っています。曲は童謡の「ロンドン橋」でした。
どこで鳴っているのだろうか?こんな音がする物、家にあったかしらと探しているうちに、オルゴールのメロディだと気が付き本棚へ向かいます。
その頃にはもう音楽は止まっていました。

我が家は昔、オルゴールにはまっていた時期がありまして、その時に集めた4体が本棚へ並べてあります。
ですが動かさないまま、10年以上は経っているという代物です。
確認の為、1個づつ鳴らしてみますがどれもメロディが違います。
そして最後の1個を鳴らそうとネジを回しますが…壊れているのか全く回りません。
ひっくり返して表示を確認してみると、その壊れているオルゴールのメロディが「ロンドン橋」でした。

壊れて動かないはずのオルゴールがメロディを奏でていたという怪奇現象。
私と夫は青ざめましたが、何となくお兄ちゃんが最後の挨拶をしに寄ってくれたのではないかと感じました。

生真面目で生きづらかったお兄ちゃんも、天国ではきっと元気に過ごしている。私はそう思っています。

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本棚に置かれていた、壊れて鳴らないはずのオルゴール

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