恐怖の泉

人間の怖い話「一瞬の油断」

これは、私が仕事を始めて2年が経った時の事です。

私の職場には早番と遅番が1週間交代であり、遅番だと帰りが夜の11時過ぎと遅くなっていました。
ある日の遅番の帰り際、車に乗りこんでスマホを触っていたら、ふと会社の施錠をしたか気になったので確認しに戻ります。
車を出てから会社の鍵を確認し、また車へ戻ります。その間数秒です。
さて帰ろうかとエンジンをかけた瞬間、後部座席の下から男性が現れ、私の口を手で塞いできました。

「静かにしたら殺さない。」

恐怖のあまり声をあげることも出来ず、何が起こったのか分からずで頭が真っ白になり、私はパニックになってしまいました。
とりあえず言う事を聞いて頷き、相手の顔を見ると…
それは同じ会社の違う部署で働く男性でした。

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驚いた私は
「H(仮名)さん?何で?」
と声を上げます。だって大した面識も会話も無い男性でしたから。
するとHさんは言います。

「君がこの会社に来てからずっと気になっていたんだ。」
「今すぐオレのものにならないと、ここで殺す。」

私は怖くて要求を飲む事しか出来ず「わかりました」と震えながら返しました。
するとHさんは車の助手席に入ってきてシートを倒し、私を無理やり後部席に連れ込もうとしてきたのです。
私は必死に
「やめて!」
と叫びますが、Hさんは
「付き合っているんだから良いだろ?」
と言って服を強引に引っ張ってきます。
無我夢中で抵抗すると、彼はどこかに頭を打ったみたいで力が弱まり、その隙に脱出した私は会社の建物に身を隠しました。
そして先程帰った同僚に電話をして、今までの経緯を全て話します。
幸い、まだそう遠くまで行っていなかった同僚はすぐに会社へ戻ってきてくれ、九死に一生です。
Hさんはどこかへ逃げたのか姿が見えず、これはもう警察沙汰ということで警察に連絡し被害届を出しました。

私はしばらく会社を休めという事で、休暇をとることとなりました。
その間にHさんは逮捕され、会社も懲戒解雇となり、もう大丈夫だろうから安心して戻って欲しいと会社は言ってくれます。
その後、女性は遅番禁止となり、念の為に私は引越しもして会社に残る決断をしました。
家族からは会社を辞めてほしいとは言われました。でも今の仕事は気に入っていますし、同僚とも良い関係で、そもそも私が悪い訳では無いので辞めたくありません。
犯人も捕まっている事ですし、きっと大丈夫でしょう。

この事件でHさんは待ち伏せをし、私が車を離れた数秒で車内へ侵入したのだそうです。
警察からは、例え一瞬だとしても車や自宅から離れる時は、必ず施錠をして油断しないよう注意されました。

「ちょっとの間だから、まぁいいか」
犯罪者は、その一瞬の隙を狙っています。

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