恐怖の泉

人間の怖い話「ダメ男にする女」

※この話に出てくる名前は全て仮名です。

私にはAという友達がいます。
Aとは高校からの付き合いで、社会人になってからもたまに一緒に遊んだりオンラインでゲームをするような仲です。

Aの顔や所作はザ・お嬢様という出で立ちで、年齢を感じさせない童顔です。
どこか儚そうな雰囲気もあって、派手さはなくても集団の中にいるとなぜか目を引く魅力がありました。
誰に対しても笑顔で接しながら、本人は人見知りだと言っています。
どこまでが人見知りかなのか線引きはよく分かりませんが、私から見る限りは特に人見知り要素はありません。
そして気を許した人には優しくて義理深い、いわゆる狭く深く付き合うタイプです。

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私「最近、Zとの関係はどうなん?」
A「仲良くしてたし、いっぱい遊んだけど…なんか最近様子がおかしいの。ちょっとそれで悩んでてさ。」
私「おかしいってどういう風に?」
A「なんか無気力になって、やたらと束縛するし情緒不安定な感じ。『Aがいないと生きていけない』って言って泣いたりヒス起こしたりするし。」

Zは、私と仲良くなってから最初にAがお付き合いした男性でした。
Aの話の内容だと、運悪くメンヘラと付き合ってしまったのかなと私は思いました。
Aは誰に対してもフラットに接するので、女性慣れしてない男性にはその優しさが刺さったのではないかと。
その時は「なるべく深入りせずに距離置いた方がいいよ」とアドバイスし、話は流れました。

後日Zとの縁は切れたようですが、モテるAは常に男性との付き合いがあります。
しかしその都度トラブルを抱えてしまうのです。

「Yくん、私と付き合ってからおかしくなっちゃった…。学校も中退しちゃったし、いつも不安でソワソワして引きこもってるみたい。」
「前話してたXさん、海外出張行くって言ってそのまま失踪したっぽい。出発する前から塞ぎ込んでたし不安定になってる気がした。」
「いつも遊んでたWちゃん、最近病んで専門学校中退して鬱発症してニートやってるんだって。前はあんなに頑張っててカッコよかったのに…つらい。」
「Vだけど付き合ってからめっちゃ甘えたり寂しがるようになって、前は聞いてくれなかった小さなお願いもハイハイ言うこと聞いてくれちゃって、正直少し重いんだ…。」

話を聞いていると、Aは楽しんで男性と付き合ったり仲良くしたい気持ちがあるのに対し、相手の男性が一方的にダメ化・メンヘラ化しているという共通点があることに気づきました。
男性ウケしやすいAなので、近づく男性の絶対数が多いと自ずと変な方の数も多くなるのかと考察しましたが、ここまでくるとAにも何か問題があるのかもと感じます。

社会人になって数年経ち、私とAは新しいオンラインゲームを始め、他のプレイヤーをたまに交えながら遊ぶようになりました。
そこで仲良くなったのがUという男性で、歳や居住地がそこそこ近く、柔らかい物腰ということもあり、打ち解けた私達はいつの間にか3人で遊ぶ回数が増えました。

「俺、Aの事が好きなんだ。だから上手くいくよう、協力して欲しい。」

ある日、Uは自分の気持ちを吐露してきました。
何となく気付いてはいたので、私も喜んで助力をし、それが功を奏したのか2人は付き合うようになりました。
それからも3人でゲームをすることは続きましたが、半年ほど経った頃、Uから相談を受けます。

U「このままAと一緒にいたら、俺ヤバいかも…。」
私「どして?」
U「凄く俺のこと気遣ってくれるし、優しくしてくれて幸せになるんだけどさ。上手く言えないけど…Aのこと以外考えられなくなって、どんどんダメになっていく気がする。」
私「なんだ~。惚気ならそんな深刻な声で言わないでよ。」
U「いや、惚気じゃなくて。なんか征服されてるような、常に手のひらで転がされて操られてる感覚になって。そういう関係って嫌な筈なのに、いつの間にか嬉しくて堪らなくなって…。俺が俺じゃない何かになってる気がして…怖いんだ。」

心当たりがあった私は、2人でいる時にAはどんな感じなのか質問してみました。

U「Aはちょっとワガママ言ったり空気が読めない部分もあるけど、本当に思いやりあるし、俺だけが特別みたいな扱いをしてくれて居心地が良いんだ。
俺がどんなヘマしても、絶対に他の人みたいに癇癪起こしたりしない。
微笑みながら
『Uちゃんがそういうことすると悲しいんだ。本当は○○してほしいんだけど…いつも優しくしてくれるUちゃんならできるよね?』
とか言うだけ。
人の言う通りにするなんて、今までダサいし面倒って思ってたけど、Aのお願いは何故か自分で進んで叶えてあげたくなる。
でも最近はそれが不気味に感じてしまってて。かと言ってAから離れるのも嫌なんだけど…。」

私はUに、Aと過去に付き合った男性がどうなるかを伝えてみました。
するとUは決意したように語ります。
「俺、Aから離れるわ。Aはマジで危険だと思う。
何でも受け入れて肯定してくれて、俺の唯一絶対の存在みたいになってる。俺はAの為なら何でもやってしまいそうな気がする。
冷静に考えて、自分が気持ち悪くなった。」
そう言い残し、Uは私達から離れていきました。

同性の友達として付き合っている分には感じなかったのですが、Aには異性を精神的に掌握する力があるようです。
本人は無意識にやっているようですし、この分だとまた何かがあると思うので、私は深入りせず静かに見守っておこうと思います。

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