恐怖の泉

実話系・怖い話「バスの親子」

これは私が、友達とファミレスで盛り上がって帰宅時間が遅くなった時の話です。

ついつい話が尽きず、気が付くと帰宅するバスの最終便の時刻が近づいていました。
なんとか乗車には間に合い、あとは家の近くまでバスに揺られるだけです。

バスには私の他に、小さな男の子と女性が乗っていました。きっと親子なのでしょう。
最後尾に座っていて、2人とも帽子を被っていたため表情は見えませんでしたが、どうやら戦隊ヒーロー物の話をして楽しんでいるようです。
私は特に気にせず、中間ぐらいの席に座り携帯を触って時間を潰します。

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バスに乗ってしばらくすると、私は後ろから聞こえていた声が消えている事に気付きました。
それまで一度もバスは停車しておらず、乗客の出入りはありません。
あれ?っと思って振り返ると…そこには親子の姿など無かったのです。

私の血の気がサッと引き、冷や汗が吹き出ます。
反射的に席を、運転手さんのすぐ後ろへ移動させました。

そして停留所へ到着し、降りる際に居ても立っても居られず、私は運転手さんへ
「私と乗っていた親子連れ、どこで降りたんですか?」
と尋ねたんです。
すると運転手さんは変な顔をして
「親子?この便に乗ったお客さんはあなただけですよ。」
と言うんです。

そんなはずはない!確かに親子が乗っていた!
運転手さんにそう問い詰めようかと思いましたが、そんなことを言っても困らせるだけだと思い、私はバスを降ります。
きっと私が見間違えたのだろう…。
そう思う事にしたんです。

ここからはいつもの見慣れた帰り道なのですが、私は怖くなってしまって歩き出す事が出来ません。
自宅まではどんどん人気のない所に入っていくので、今の状況でそこへ踏み入るのはかなり勇気がいります。
ですがそんな事は言っていられず、帰らなければいけません。

私ってこんなに怖がりだったかな、と思いながら早足で歩いていると、笑い声が聞こえた気がしました。
思わず振り返って辺りを見回しても、暗い夜道には誰もいません。

私は走って帰りたい衝動をグッとこらえました。
こういう時に走って逃げるのはダメだと、どこかで聞いた事があったのです。
意識せず、自然体でいることが大切だと自分に言い聞かせ、歌を口ずさみながら帰ります。

夜の住宅街は、意外に音が聞こえてきます。
人の会話なのか、テレビの音なのか。
ふと気が付くと、その音に混じって会話している声が聞こえます。
男の子の声で、戦隊もののヒーローの事を話しているようです。

私はたまらず走り出しました。
ハイヒールを履いていたため、すぐにスピードが落ちてしまいますが、とにかく走って走って走りまくります。
恐怖から、もう振り向く事は出来ません。

家に到着して開口一番「塩ちょうだい!」と私は叫びました。
両親は驚いていましたが、私の剣幕に只ならぬ雰囲気を感じたようで、理由を聞かずに塩を振り撒いてくれました。

これ以降、私はバスが苦手になってしまい、乗らないようにしています。
親子の姿や声もその日だけの出来事でしたが…今思い返すだけでもゾッとしてしまいます。

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