恐怖の泉

実話系・怖い話「崩れた積み石」

これは数年前、私が転職して引越したアパートで体験した話です。

そこは築60年にもなる古い木造アパートで、外観は年季が入って少し不気味な感じがしていました。
裏手には林もあり、夜ともなると雰囲気が出て、物好きか無関心でないと選ばないような物件です。
ただ内装は綺麗にリフォームされていて、当時の私はあまりこだわりも無かったので、家賃の安さとペット可という点に魅力を感じ、入居を決めました。

引越し直後は慣れない仕事や生活サイクルに苦労しましたが、慣れてしまえばこっちのものです。
愛犬との時間が最上である私は、暇さえあれば一緒に遊んで過ごしていました。

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ペット可というだけあって、大家さんの理解が進んでいるのか、アパートの裏にはちょっとした庭のようなスペースが在ります。
ある日そこで愛犬とボールで遊んでいたのですが、私のコントロールミスですっぽ抜けて投げてしまい、裏手の林へ飛んでいってしまいました。
幸いにもボールはすぐに見つかったのですが、足元をよく見てみると積み上げられていた石の周辺に、同じような石が数個散乱して崩れたようになっていたのです。
もしかしてボールが当たって崩れたのかもしれないと思った私は、適当に石を積み直してその場を去り、また犬と遊んでから部屋に戻りました。

その日の夜、ワンワンと吠える愛犬の鳴き声で目が覚めました。
どうしたんだろうと思って様子を見ると、何故か玄関のドアに向かってずっと吠え続けています。

愛犬は普段から大人しくて、吠える事も滅多にありません。
それが夜中に騒ぐのは少しおかしいなとは感じたのですが、それ以上に近所迷惑を気にした私は、とにかく愛犬を落ち着かせて、もう大丈夫だろうと確信してから再び床に着きました。

翌日、いつものように支度をして玄関を出て驚きました。
ドアの外側に悪戯をされたようで、泥が付いていたのです。
他は全く綺麗なままなので、まるで泥を運んできて、私のドアを狙って付けた様な状態になっていました。

うわっやられたと思いましたが、ひょっとしたら昨晩うるさくしたせいかも知れないと思い、時間も無いのでとりあえずそのままにして仕事へ向かいます。
帰宅すると朝のまま変化が無かったので、ドアをキレイにしてから夕飯を食べ始めました。
ところが、食事の時はいつも私の横から離れない愛犬が、ずっと玄関の前に座ってこちらへ来ません。
やはり何かあるのかなと思ったのですが、周囲を確認しても異変は特に無く、食事を終えた私は寝る事にしました。

「ワン!ワン!」

夜、また愛犬の声で目を覚ましました。
「一体どうした~?」
またかと思って近所迷惑にならないよう愛犬を落ち着かせていると、ふと愛犬が吠えているのは玄関の泥と何か関係があるんじゃないか、と思ったのです。

もしかしたら今、この扉の向こうに、何かが居るのだろうか…。

そう考えると妄想が進んでしまい、怖くなった私は愛犬を引き連れて布団へ潜り込み、そのまま寝て時が過ぎるのを待ちます。

翌朝、玄関を確認すると…。
やはり予想通り、またドアの外側に泥が付着していました。

その後も愛犬は玄関を気にし続け、夜に吠えると翌朝には玄関へ泥が付くという現象が起き続けます。
自分なりに考えた結果、警察に相談するしかないと決意したのですが、それにはまず証拠を押さえる必要があると思い、次に泥が付いたら写真を撮っておこうと機会を伺います。
ところが不思議なもので、待っていると何の変化も起きません。

しばらくは何事も無く過ぎたので、もう終わったのかなと安堵していた矢先。
朝起きてみると、部屋の中のあちこちに泥が付いていました。

夜中に侵入者があったのかと思いましたが、部屋の鍵は全て掛かっていました。
それに部屋へ入ったのなら、いくら寝ていたとしてもその存在に気が付かないはずがありません。
愛犬も全く吠えませんでした。

これは警察どころの話じゃないと思った私は、急いで部屋を掃除し、引き払う準備を始めました。
愛犬は一度実家に預けて、私は引越し先が見つかるまで知人の部屋やホテル等に泊まります。
幸いな事に、引越しすると同じ現象が起きる事は無くなりました。

どうしてこんな事態になってしまったのか自分にはよく分かりませんが、以前に友人と話した際、どうも「積み石」が怪しいのではないかという結論になりました。
確かに私が積み石を触った時から異変が始まったので、その線もあながち間違いではないのかも知れません。
色々と調べる事も出来るのでしょうが、変に石を触った事を指摘されるのも嫌だなと思って放置しているので、追及はしていません。

前の話幽霊のイラスト

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