恐怖の泉

実話系・怖い話「反応した自動ブレーキ」

私は職場への通勤で片道1時間程、車を運転しています。
普段は残業がほとんど無く19時には仕事を終えるのですが、トラブルが重なって帰りが21時ごろになった時がありました。

その帰り道、いつも通っている国道が事故で大渋滞。早く帰りたい私は、渋滞を避けるために側道へ入ります。
その道は住宅街で交差点が多く、見通しも悪い道です。
「運転しにくい所だなぁ。」
なんて思いながらも、いつも以上に注意を払って走行します。
交差点に差し掛かり、一旦停止をして左右の安全を確認し、アクセルを踏み発進しようとした瞬間でした。

「ピピピピ!!」

けたたましくアラーム音が鳴り、自動ブレーキが発生して車が急停車しました。
何か前方に障害物を検知したようです。
びっくりして車を降りて周囲を確認したのですが…周りには何も異常がありません。
「何に反応したのだろう?」
ひょっとしてセンサーに誤作動が起きたのかもと思いながら、とりあえずそのまま車に乗って帰宅しました。

スポンサーリンク

それから1ヵ月後くらいに、職場で送別会がありました。
21時にお開きとなり、いつもの国道で帰宅しようとするとまた大渋滞。
このまま大通りを走って帰っても良かったのですが、その日はとても疲れていたので早く帰宅したいと思い、またしても側道を抜けるルートへと変更します。

「そういえば、この道で変な現象があったな。」
前に自動ブレーキがかかった事を思い出しながら、同じ交差点を走った時でした。
また同じようにアラーム音が鳴り、車が急停止してしまったのです。

2度も同じ場所で異変が起きたので怖くなった私は、車から降りて入念に周囲を見渡しました。
ですがやはり何事も無く、これと思われるような痕跡は全くありません。
これは車に異常があるのかもしれないと思い、週末にディーラーへ車を持っていたのですが、診断の結果異常なし。
腑に落ちませんでしたが、特に異常がないのなら仕方がありません。

次の日から、私の頭からその不気味な現象が離れなくなりました。
モヤモヤを抱えて生活するのは何とも気持ちの悪いものです。
そこで原因をはっきりさせたい私は、あえて国道ではなく側道を通り、検証してみる事にしたのです。

ところが何回同じ道を走っても、自動ブレーキが作動する事はありませんでした。
「偶然がたまたま重なっただけなんだろうか?」
結局分からず仕舞で、側道を通る機会も減ったため、私はこの異変を忘れていきました。

それからしばらく経ち、久しぶりに残業して帰路につくと、また国道が渋滞していました。
こんな時は迷わず側道です。
何度か通ってもう慣れていましたから、特に意識もせず車を走らせていたのですが…。

「ピピピピ!!」

例の交差点に差し掛かった時、またしても私の車の自動ブレーキが作動して停まってしまったのです。

3回目の異変に、私は車から降りてぼう然としてしまいました。
すると車の急ブレーキの音を聞いて心配したのか、おじさんがこちらへ歩いてきました。

「大丈夫?」
声をかけてくれたおじさんに、私は
「えぇ、多分大丈夫だと思うのですが。車が勝手に急ブレーキをかけまして…。実はこれ3回目なんですよね。」
と答えます。
するとそのおじさんは目を大きく見開き、驚きながら話をしたのです。

今から1年半くらい前の、丁度この時間。
この交差点で、自転車に乗った男性が車にはねられて亡くなったのだそうです。
はねた車は私と同じ黒いセダンだったらしく、そのまま轢き逃げして犯人は捕まっていないのだとか。

私が会社を21時に出ると、ほぼ同じ時間にこの交差点へ到着していました。
男性の霊なのか分かりませんが、目には見えない何かに私の車が反応していたと考えると、妙に納得すると同時に鳥肌が立ちました。

それから、私はその道を通ることを止めました。
事故が起きそうな危険な道路を通らないのも、安全運転の1つだと思っての選択です。
少しでも交通事故の少ない世の中になるよう、願って止みません。

スポンサーリンク

TOP