恐怖の泉

実話系・怖い話「零戦のプラモデル」

僕は小さい頃、小児喘息を患っており、周りの子供より外で遊ぶ機会は多くありませんでした。
代わりと言ってはなんですが、手先が器用だった僕は小さい頃からプラモデルに凝ってきました。

そのためプラモデル歴は長く、様々な物を作ってきました。
自動車、デコトラ、城や船、軍艦、航空機などなど…。
特に旧日本海軍の軍艦や航空機は、本当に数え切れないほどの制作物があります。

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ある日、僕は「零戦五二型」という航空機のプラモデルを購入しました。
早速、購入した日の夜から作成に取り掛かります。

この五二型は某有名メーカーの物で、精密に再現されており、マニアにとってはとても興奮する名品となっています。
僕は少しずつ、少しずつ、ゆっくりと完成させていく過程を噛みしめながら、着実に組み立てていきました。
組み立てだけでなく塗装も行うのが僕のやり方でして、作りながらも
「実際に戦っていた零戦の再現がしたいな。」
と思うようになり、経年劣化や使用感も意識して仕上げていきます。
およそ1ヶ月半をかけて、ようやく五二型は出来上がりとなりました。

自分で言うのもなんですが、大満足の出来栄えで本当の零戦のようでした。
家族や友達にも披露すると
「お前凄いな!」「ほ、本物の零戦じゃん。」「クオリティ高い、プラモデルで飯食えるよ。」
と驚かれるようなクオリティとなりました。
そんな零戦を大切に保管してベッドに入ったある日、異変が起こりました。

寝ていると、どこからともなく零戦のエンジン音が聞こえてきます。
夢か現実かはっきりしないながらも、その音を気に留めず目を閉じます。
しかし数分後のことです。

「ドドドドドドドドド!」「バーーン!」

まるで銃を撃っているようなもの凄い音が鳴り響き、僕は思わず「うわぁ!」と叫んで跳ね起きました。
隣の部屋で寝ている両親にもその声が聞こえたのか
「おい大丈夫か?」「何かあったの?」
と心配そうに部屋を訪れます。
僕が今あった出来事を説明すると、母親は
「もしかして完成した零戦のせいかもね。」
と言っておりました。
確かに何日間も熱を上げて取り組んだ訳ですから、それが夢に出る事は想像出来ます。

ところが数日後、寝ているとまた零戦のエンジン音と機銃の音が鳴り響き、僕は目を覚ましました。
そこでふと完成した零戦に目をやると、寝る前に置いた保管場所に無いではありませんか!

僕は驚いて電気をつけて、部屋中を探し回りました。
家族も物音に起きてくれて、家中を探した所、なぜか1階の仏壇前にある座布団の上に零戦があったのです。
寝る時は間違いなく、いつもの保管場所に置いたはずなのですが…。

そして何気なく、僕は仏壇近くにある机の引き出しを開けました。
なぜ開けたのか、自分でも分かりません。

そこにはひい爺ちゃんの日記が入っていました。
読んで初めて知ったのですが、ひい爺ちゃんはなんと太平洋戦争中、零戦のパイロットだったのです。
日記は昭和19年10月24日で途切れておりましたが、偶然にも零戦のプラモデルを購入した日も10月24日でした。
何か不思議な縁を感じた私は、仏壇に線香をあげずにはいられませんでした。

僕の零戦好きと、ひい爺さんの零戦に乗っていた時の記憶が重なったとでもいうのでしょうか。
その後は2度と異変は起きていませんが、不思議な体験でした。

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