恐怖の泉

人間の怖い話「田んぼ道の呻き声」

私の実家は大変田舎で、周りは田んぼと山があるのみです。今でも実家周りの光景はさほど変わりません。
夜になると真っ暗になるような場所でしたが、それでも愛着はあって私は好きでした。

高校卒業後、運よく大学の推薦枠で首都圏の大学へ通うことになった私。
地元から離れて一人暮らしをするのは不安でしたが、両親や近所の方の後押しがあったり、大学で友達も出来たりと生活は順調でした。

そしてあっという間に大学初めての夏休みとなり、私は学生生活の報告もかねて実家へ帰省することにしたのです。

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楽しい生活に慣れ始めていたこともあり、私は少々浮かれていたのかもしれません。
実家の最寄り駅に到着したのは夜の11時くらいで、歩いても40分程度です。
両親に迎えを頼もうとも思ったのですが、夜遅くに迎えに来てもらうのも悪かったので歩いて帰宅することにしました。

実家までの街灯はまばらではありましたが、細い国道をまっすぐ歩くだけですし、車の通りもほぼ無く安全に帰れます。
最初の内はテンションも高く意気揚々と歩いていけたのですが、途中で無縁仏のお墓やトンネルなどの薄気味悪い箇所を通らなければならず、だんだんと陰鬱な気持ちになってきました。
ここで両親に助けを呼ぶのはなんだか恥ずかしかったですし、後で変に問い詰められるのも嫌だったのでなんとか頑張ったのですが、異変は実家まで約10分程度の所まできて起こりました。

両脇は田んぼで街灯が全く無い道を通っていると、何か呻き声のようなものが聞こえたような気がしました。
気のせいだろう、と思いさっさと歩こうとするも、やはり聞こえます。

「うぅぅ…」

それは低い声で田んぼの方向から聞こえていました。
実家周辺は鹿や猪が出る事もあり、野生の獣の可能性もありましたが、それは明らかに人の声でした。
歩を進めると、声はひと際大きくなりました。

恐ろしくなると悲鳴を上げたりといったシーンが映画やドラマではありますが、私の場合は完全に動きを止め固まってしまいました。

「ううぅぅ~!」

呻き声がひと際大きくなり、そこで私は弾けるように走り去りました。
走っている最中も更に声が聞こえましたが、一心不乱に走り続てその場から離れました。

ようやく実家へ辿り着くと、両親が出迎えてくれて遅い夕食を用意してくれました。
安堵感と久しぶりの両親との再会でようやく恐怖が落ち着いた私は、口にするのも怖かったのでさっきのことは明日にでも話せばよいかと思い、その日は就寝しました。

翌日起きると昼頃にサイレンが聞こえてきました。
地元では何か異変が起きるとサイレンで役所から案内があるのですが、内容はこうでした。

「行方不明になっていたおばあさんは発見されました。」

何の事かよく分からず両親に聞いてみると、昔からお世話になっていた近所のおばあさんが痴呆を発症してしまい、行方不明になっていたそうです。
これには大変びっくりしました。
そしてさらに驚いたのは、そのおばあさんは私が昨日通った田んぼの用水路で亡くなっているのが見つかったということです。
つまり私が昨晩、聞いたあの呻き声は…。

結局、誰にもこの事は話しておりません。
ひょっとして私は助けられた命を見殺しにしたのではないかという罪悪感から、今でもたまに夢に見て苦しめられます。

前の話幽霊のイラスト

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