恐怖の泉

実話系・怖い話「帰り道での遭難」

これは大雪が降ったある日、私が体験した話です。

仕事から解放された私が最寄り駅へ着く頃には、辺り一面が真っ白な雪景色でした。
雪の白さで夜だというのに明るく、幻想的な雰囲気があります。

駅の前は商店街で、いつもならまだたくさんの人が住宅街へ向かって歩いている時間です。
しかしその日は、雪のせいか誰もいませんでした。
バス停に立って待っている間も、誰1人通りません。

急に心細くなった私は、家まで歩いて帰ろうと考えます。
横着してバスを利用していましたが、歩いても15分くらいの道程なので、この天気でしたらバスを待つより早く帰宅できるかもしれません。
私は傘を差し、膝下くらいまで降り積もった雪に足をとられながら歩き出しました。

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途中、木の枝にこんもり降り積もった雪をつついて落としたり、真っ白な景色を楽しみながら歩きます。
塀の上の雪は根こそぎ手で押して、「よし」なんて呟いてると、なんだかワクワクしたり。
こんな大雪は久しぶりでした。

すると途中、フッと違和感を感じた気がしました。
空気が変わったと言いますか、あまりにも静か過ぎます。
寒さも和らぎ、耳が詰まった感覚がします。

辺りを見渡すと、大きな洋館がありました。
帰り道は常日頃から歩いていて、真っすぐな道ですが、こんな洋館見た事もありません。
「最近建ったのかな?」
と思いきや、異変はさらに続きます。
いつまで経っても、自宅に辿り着けません。

自宅への帰り道で迷うなんて有り得るでしょうか。
しかし既に30分は過ぎています。
仕方なく、私は家へ電話をすることにしました。

「遭難したらしい。」
ありのままを主人へ話すと、案の定ゲラゲラ笑われました。
「今どの辺?迎えに行くよ。」
そう言われても、自分の居場所が分かっていれば迷う事もありません。

「どこかに自販機ない?」
「あ~あるある。」
「住所とか書いてるはずだから、読んでみて。」
ところがその地名は、全く聞き覚えの無い場所だったのです。
主人は
「調べて迎えに行くから、温かい飲み物でも買って待ってなさい。温かい場所があればそこへ行って。近くに行ったら電話するから。」
と言って、電話を切りました。

自販機には温かいお茶どころか、温かい飲み物がありません。
仕方なくコーラを買って、休めそうな場所を求めて歩きます。

歩きながらよくよく辺りを見ると、住宅街ではあるのですが木造のものばかり目に入ります。
あれ~こんな古い地域だったっけな?と思いつつ進み、公園を発見したのでベンチの雪を払いのけ、座りました。
上を見れば、大きな花のような雪がどんどん舞い降りてきてとても綺麗でした。

10分ほどで、主人から電話がきました。
「今どこにいる?」
「公園のベンチ。」
「だったら、公園を突っ切って反対の道路へ出たら右手に曲がって。電話は切るなよ。」
いつもの主人らしくなく、命令口調なのが気になりましたが言われた通り歩きます。
「道路右に曲がった。」
「3件目ね。そこの家の玄関開けて入って。」
「なんで?他人の家じゃないの?」
「いいから言われた通りにする。」

玄関を開けると、そこには姑が神棚を見上げて立っていました。
あれ?と思って振り返ると、いつの間にか私の家の玄関になっているではありませんか。
姑は私を見るなり、座り込んでしまいました。

私が自販機で読んだ住所は、20年以上も前に使われていた旧番地だったそうです。
当然使われておらず、公園も今では駐車場になってありません。

主人はその地域で生まれ育ったため、思い出して道順を私に辿らせたと言います。
「自宅の目と鼻の先で遭難するところだった」
なんて笑い話になっていますが、迷った当人である私からすると、あの時帰れなかったらと思うと…冷や汗ものです。

私は一体、どこに迷い込んでいたというのでしょうか…。
不思議な事ってあるものです。

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