恐怖の泉

実話系・怖い話「無いはずの上履き」

これは、私が親戚のおじさんから聞いた話です。

おじさんがまだ子供だった頃。
現代のコンクリート校舎と違って、当時はまだ木造の校舎が残っていました。
おじさんの学校も木造だったらしく、廊下を歩く度にギシギシと軋む音が鳴り響き、放課後に1人で歩くのは怖かったと言います。

おじさんの学校は生徒数が少なく、1クラスに15人ほどしか生徒がいません。
その分、お互いの関わりが親密で皆一緒に仲良く校庭で遊び回ることが多かったそうです。

そんな楽しい日々が続くと思っていたある日、突然悲しい出来事が起こります。
おじさんのクラスメイトの男の子が亡くなったんです。

スポンサーリンク

その日は朝から担任の先生の様子がおかしく、何か変だなとおじさん達は思ったそうです。
すると嫌な予感は的中して、担任の先生からクラスメイト全員へ、昨夜遅くに男の子が亡くなった話を聞かされました。

あまりにも突然の話に、誰も声を発しない重い空気が流れます。
先生からの説明を聞いている最中には、すすり泣く女子生徒の姿もあったそうです。
死因は教えてもらえなかったといいます。

その後クラスメイトで話し合って、男の子がよく登っていた校庭の木の近くに花を植えることとなりました。
友達に対して自分達でも出来る精一杯の供養をしようと思ってのことでした。
毎日の世話を欠かさずに行い、月日が経って花は順調に育ちます。
男の子が亡くなった当初の悲しい雰囲気も次第に薄れ、今まで通りの学校生活へ戻っていった頃、事件が起こりました。

亡くなった男の子が使っていた下駄箱があったのですが、当然ながら本人はもういませんので空のままです。
ところがいつも学校へ1番に登校するおじさんのクラスメイトが、亡くなった男の子の下駄箱に上履きが置かれているのを見た、というのです。

クラスメイトは「気持ち悪く感じてそのまま教室に走っていった」そうなのですが、その後に登校してきたクラスメイトは誰も上履きを見ていません。
そこで皆で一緒に下駄箱を見に行ってみると、当然上履きなど無いのです。
何か見間違えたんじゃなかと指摘したものの、それは絶対にないと1番に登校した子は主張。
そこまで言うならと興味を持ったおじさんは、いつも1番に登校する子と相談して、次の日は一緒に登校しようと決めます。

翌日。
朝早く起きて相手の子と合流、登校します。
学校へ到着後、早速亡くなった男の子の下駄箱を見てみると…なんと上履きが置いてあります。
1番に登校していた子の話は本当でした。

他の下駄箱を見た限りでは、自分たち以外の生徒が登校している様子はありません。
別の生徒が悪戯をしているというなら、昨日皆が帰った後から、学校が閉まる前に上履きを置いていると推理できます。
悪戯している子の正体を暴いてやろうと考えた2人は、下駄箱が見える別の場所で待ち伏せをしていました。

ですが次々と生徒が登校するものの、亡くなった男の子の下駄箱に何かをする者は誰もいません。
しばらくして一度下駄箱を確認しようと2人で見に行ってみると…驚いた事に上履きが無くなっていました。
誰も何もしていないのに、です。

この話は瞬く間にクラス中へ広まりました。
おじさん達の真似をして他の生徒も朝早く登校し、下駄箱の確認をしたそうですが…
不思議とそれ以降、2度と上履きが出現することはありませんでした。

無いはずの上履きがあったと言った罪で嘘つき呼ばわりされ、当時はおじさんも悔しかったそうです。
しかしそれも、木の側に植えた花が元気に咲いている姿を見てどうでもよくなったのだとか。

ひょっとしたら、亡くなった男の子が悪戯をしておじさん達と遊んでいたのかもしれません。

スポンサーリンク

TOP