恐怖の泉

人間の怖い話「最後の再会」

これは数年前の6月の事です。
私は毎日忙しく働き、いつもと変わらない日常を繰り返し過ごしていました。

仕事を終えて自宅に帰っている途中、携帯電話に着信があったので出てみると、相手は大学時代の友人でした。
友人といっても、彼とはもう10年近く連絡を交わしていない関係です。
大学では毎日のように食事やらお酒やらで時間を共にしたというのに、無常なものです。

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突然の電話に最初は驚き戸惑いましたが、数分会話をするとやはり仲の良かった相手です。
会話が弾み、久々に会って食事をしながらお酒でも飲みたいという話になりました。
私は週末なら仕事が休みでしたから、彼と会う約束をして電話を切ります。

週末になって待ち合わせ場所の駅前へ向かうと、彼はまだ来ていないようでした。
しばらく経って、私に手を振りながら小走りで近づいて来る男性に気付き、よく見るとその男が大学時代の友人でした。

友人は私に
「オレの事気づかなかった?約束の時間からずっとあっちで待っていたんだよ!」
と言いますが、正直気づきませんでした。
彼の顔や雰囲気は、大学時代のそれとは全くの別人になっていました。
10年ぶりぐらいの再会ですから、それは少しは変わるのは当然分かりますが…。
立ち話もなんなので、とりあえず居酒屋へと向かいます。

見た目は変わったとしても、中身は大学当時の彼のままでした。
多少酒の飲み方が荒いな、とは感じましたが、私達は大学時代の昔話で徐々に盛り上がっていき、気づけば大学時代へ戻ったかのような時間が流れます。

2時間くらい楽しく過ごした頃でしょうか。
友人は突然
「今日はお前とこうやって久々に会ってお酒を飲めて、本当に良かったよ!ありがとうな!」
と言ってきました。
私は「何言ってるんだよ、いつでもまた飲もう!」と彼の彼の肩を叩きながら応えると、彼の口から思いもよらない言葉が…。

「実はオレ、人を殺したんだよね。それで指名手配中になっちゃって逃亡生活をしているんだ。
だけどもう警察から逃げるのも疲れたし、殺した相手が毎晩夢に出てきて苦しくなってさ。これから自首しようと思っているんだ。
自首する前に何故か、お前の事思い出して。つい連絡してみたら会える事になったから、最後に食事しながらお酒を飲んで終わりにしたかったんだ。」

かなりの衝撃を受けました。
誰を殺めたのか尋ねると、彼女を包丁で刺し殺したのだそうです。
女が浮気をしていて、ついカッとなっての事だそうです。

逃亡生活を送っていたのであれば、見た目が激変していたのも納得です。
初めは嘘話かとも思ったのですが、彼は居酒屋を出ると私と一緒に、駅前近くにある交番に自首をしました。
私は交番の近くまでは行かず、少し離れた場所から様子を伺っていましたが、10分もしないうちに赤色灯を点けたパトカーがやって来て彼を乗せ、恐らく警察署へと連れて行かれました。

自宅に帰った私は、彼から聞いた殺人事件について調べてみました。
そして該当する事件を発見し、やはり彼が言っていた事は事実だったのだと確信出来ました。

彼が犯した罪は決して許される事ではありませんし、裁かれるべきだとは思います。
でもどこかやるせない、複雑な気持ちもあります…。

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