恐怖の泉

人間の怖い話「紹介されました」

これは私の体験談なのですが…
ある時、友人から困った事があると相談をされました。

その友人とは今まで特筆するほど接点が無かったのですが、1年ほど前に共通の知人に誘われて食事を共にしてから意気投合し、休日になると一緒に遊びへ行ったりする仲になりました。
どうやら友人は女性に付きまとわれているそうで、どんどんエスカレートしていくので困っているらしいのです。

友人が女性と知り合ったきっかけは合コンで、良い感じになって連絡先を交換したとのことでした。
しかしそれからしつこくメールで交際を迫られ、嫌気がさして拒否するようにしたのですが、今では外出先や自宅前に現れるというのです。
友人は女性にかなり怯えている様子でした。

困っているのであれば可哀想ですし、どうにか助けてあげたいという気持ちがあった私は、あまり深く考えずに
「俺が仲裁するから、3人で話し合おう。」
と提案しました。
「ありがとう助かるよ。」
友人も提案に応じたので、女性を呼び出して3人で話し合いをしました。

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その時、初めてその女性と会ったのですが、見た目は黒髪ロングヘアーの清楚系な印象です。
なかなか美人さんだったので、第一印象ではとてもストーカーをやるようには見えません。
ただ話をしてみるとすぐ、普通じゃないと感じました。

私と友人がどれだけ丁寧に説得をしても
「私は何も悪いことはしてない。」
「あなたも私を好きなはず!」
と言って、話が全く通じません。

それでも粘り強く、最後にはやや怒り気味に説得を続けると
「わかりました。」
と女性も言ってくれました。

これで友人からも感謝されて、丸く収まったな…と、思っていました。

ある日、私の携帯へ知らない所からメールが来ました。
内容は
「これからよろしくお願いします。」
とあり、写真が添付されています。

新手の迷惑メールかなと思って、好奇心からとりあえず写真を確認してみると…
そこには何故か、友人をストーカーしていたあの女性が写っていたのです。

全く意味が分かりませんでした。

なぜあのストーカー女が私のメールを知っている?
最初は友人のイタズラかと思い、彼に連絡をとったのですが…どういう訳か音信不通です。
友人と連絡が取れない間も、ストーカー女からはしつこくメールが届きます。
いい加減に頭にきた私は、返信してみることにしました。

「あなたは誰ですか?」
「以前にお会いした、○○(ストーカー女の名前)です。」
「何で俺の連絡先を知ってるんですか?」
「▲▲(友人の名前)さんから紹介されました。」

そんなまさか、と思いました。
もしメールの主が本当に彼女だとすると、私のメールアドレスを友人が漏らしたことになります。
それは流石に信じられないと思い、すぐに知人が住むマンションへ向かいました。

マンションへ到着して何度もインターホンを鳴らしましたが、友人は出てきません。
一応隣の部屋の住人に尋ねてみると、その部屋の人は引越しましたよ、と言われました。

本当に何が何だか分からず頭が混乱します。
それでもストーカー女からのメールは来続け、どんどんエスカレートしていきました。

彼女は私に交際を求め、一方的に情熱的な長文を送ってきます。
ですが内容は支離滅裂で、読むと心がざわつきました。
合コンで知り合った友人ならいざ知らず、私なんてほんの少し会っただけの関係です。
それなのにここまでグイグイ来られると、恐怖しかありません。
耐えられなくなった私は、彼女の連絡先を着信拒否にしました。

すると事態はさらに悪化します。
仕事から帰宅してみると、私のアパートの前で急に声をかけられました。
振り返ると、そこには驚くことにストーカー女がいました。

「何で俺の家を知ってるんだ!」
思わず大声をあげると、彼女は
「仕事場は知っていました。だから仕事場から後をつけてきたんです。」
と言い、満面の笑みを浮かべました。

恐怖のあまり、急いで部屋へ入り鍵を閉めます。
彼女のストーカー対象は、確実に私となっていました。

ストーカー女は執拗に付きまとい、私はどんどん精神的に追い詰められていきました。
家へ訪れる時間も破茶滅茶で、生活リズムが崩壊した私は仕事を辞め、夜逃げ同然の引越しを決行しました。
幸いにも引越したことで難を逃れた私は、現在に至るまで彼女とは一度も会っていません。

平和な日常を取り戻したある日、いなくなったあの友人から連絡が来ました。
ようやく連絡が取れた私は、今まであった出来事を全てぶちまけました。
すると友人は平謝りをして、事の顛末を話始めました。

3人で話し合いをした後も、彼女のストーカー行為は全く改善しなかったのです。
追い詰められた友人は、思わず
「他の人の所へ行ってくれ!」
と漏らした所、ストーカー女から
「それなら誰かを紹介して。」
と言われ、私の情報を与えたそうです。

その話を聞いて激怒した私は、友人との縁を切る事にしました。
自分だけ助かれば良い、そんな友人とはもう付き合う気がしません。
友人も自分が行った行為が悪かったと自覚があったようで、納得してくれました。

こうして全てが片付いた時、私はふと思い出しました。

ストーカー女に追い詰められた私は
「もういい加減止めてくれ!」
と彼女へ叫んだ時がありました。
すると彼女は言っていました。

「そんなに嫌なら、他の男紹介してよ。」
と。

もし誰かを紹介された際は、浮かれず慎重に行動されることをお勧めします。

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