恐怖の泉

人間の怖い話「見つめていた何か」

これは、私が高校時代に体験した話です。

高校2年の夏、隣の県へ引越しました。
新しい学校に転校した私は、早く仲のいい友人が出来ればと不安な気持ちでいました。

するとある日、休み時間に
「ねぇ、どこに住んでるの?」
と話し掛けられました。

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その子は見た感じ派手でもなく、ごく普通に見えました。
でもペラペラと話をする子で、一度喋り出すと止まらないのです。
話しかけてくれたのは嬉しかったのですが、失礼ながらちょっと煩わしいなと感じる部分もありました。

それからというもの、その子は私の親友だと言わんばかりに付き添ってきました。
しかもやたらと私のプライベートの話や趣味嗜好を聞きたがります。
良かれと思って話をしていたのですが、なんと私が好きだと言った歌手やアイドルのグッズを買い、学校に持ってきては
「ねぇ、この○○君って格好いいよね。私もファンになっちゃった!」
と言うのです。
あまりにもグイグイ来るもので、正直ちょっと引いてしまってました。

さらに加熱したその子は、私にゴマをすってきたり、ご機嫌を伺うような言動や行動を見せるようにもなりました。
周囲の人にも私の事を
「スゴくセンスはいいし、何でも出来るんだよ!」
と自慢げに紹介します。
実際に私の能力が高いのならともかく、誰でも出来るような事を凄く自慢するので私は苦笑です。

それでも仲良くしてくれる事は事実ですから、私は良かれと思って
「今度私の家に泊まりに来ない?」
と誘ってみました。
「うわぁ!嬉しい!泊まりたい!」
大はしゃぎする友人のテンションに呆れつつも、ちょっと心を許しつつある自分がいたような気がします。

数日後、泊まりに来た友人は部屋の中で
「この雑貨はどこで買ったの」「これは幾ら?」「あれ良いね!」
興奮気味にアイテムをチェックしてきます。
その調子で何時間も話をして疲れてしまった私は、早く寝ようと提案して就寝することにしました。

深夜、ふと目が覚めて隣に寝ているであろう友人の方を見れると…居ません。
「あれ?」
どこへ行ったのかと部屋を見渡すと、ドアが少し開いています。
「トイレかな…」
そうは思ったものの、ちょっと気になった私は探しに行きました。

部屋を出るとすぐ、廊下に友人が立っていました。
微動だにせず、ジッと何かを見ているようです。

「ねぇ、どうしたの?」
私が声を掛けると、友人は私の顔を睨んできました。
その顔といったらもう恐ろしく、恨みや憎しみといった感情が伝わってくるほどの形相です。
私はあまりの怖さに身動きが取れず、立ちすくみました。

見つめ合って1分ぐらい経ったでしょうか。
友人の表情が急に緩み、我に帰ったようにニコッと微笑んできて
「あっ、ごめんね。眠れなくて。」
と何事も無かったかのように言います。
そしてあっけにとられている私をよそに、友人は部屋へ戻ってそのまま寝てしまったのでした。

翌日から、その友人は突然私を避けるようになりました。
お泊りで仲良くなったと思った矢先の態度で、全く理由も分かりません。
更には、最近は学校へ行くと、どうも他人からジロジロと見られている気がします。
モヤモヤした私は思い切って席の隣の人に
「ねぇ、何かあったの?」
と尋ねると、話してくれました。

私の家へ泊まりに来た友人が、私の悪口を言いふらしているのだそうです。

私に与えた物は、私が強要したから渡した。
同じアイドルを好きになったのも脅されて、嫌々好きにさせられた。
私の自慢話も、褒めなければいじめると脅されたのだそうです。
挙句の果てには、家に泊まりにこなければ殴られたり蹴られた、と言いふらしていました。

その友人は学校へ来なくなり、そのまま退学したので音信不通です。
私が嫌われた理由も分からないままで、今でもショックを引きずっています。

嫌われた心当たりといえば、私の家へ泊まりにきたあの時、友人がジッと見つめていた何かと関係があるのでしょうか…。
ちなみにですが、その友人が見ていた先には仏壇がありました。

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