実話系・怖い話「日雇いの仕事」
私はいわゆる「見える」側の人間です。
ですがただ見えるだけで、何もすることは出来ません。
これはそんな私が体験した、今でも気になっている出来事です。
私は日程が合えば、日雇いの仕事をするようにしていました。
いわゆる副業というヤツです。
その日の仕事は駅前が集合場所になっていて、途中のコンビニでお弁当を買い駅へ向かうと、会社のマイクロバスがやって来たので乗りました。
バスに乗って着いた先は、巨大な倉庫でした。
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到着するなり今日の仕事の指示を受け、一斉に取り掛かります。
ピッキングの仕事で、たくさんの商品の中からリストアップされたものを選び箱に入れるだけです。
あっという間にお昼の休憩時間となり、60人くらい居た人は皆一斉に倉庫からいなくなりました。
「ここ、初めて?」
ドアから出て行く時、近くにいた方が振り向いて声をかけてくれました。
私は初めて来た場所でしたが、どうやら何人かは複数回日雇いに来ている様子です。
「ここは1人になると出るって噂があって、皆1人にならないようにしているの。だから外でお弁当を食べるんだ。」
唐突にそんな事を言われてあっけにとられましたが、まぁ今日だけだしと気軽に考えてご飯を食べます。
ベルが鳴ると、皆一斉に移動して午後の仕事へと取り掛かります。
作業中は黙々と働き、終業のベルが鳴ると日当が手渡しされます。
受け取った方は次々と建物を出て行きます。
私も外へ出ようと思ったのですが、その前にトイレと思って1人で向かいました。
トイレには先客が1人いました。
私がトイレを使い出てくると、まだその方は手を洗っています。
特に気にもず、私は警備員のいる出口へと向かいます。
「あれ、まだいたの?閉めるから早くして。」
警備員は言い切らないうち、シャッターのスイッチを押していました。
私は
「あの、まだ1人います。トイレにいました。」
と伝えると、警備員は言いました。
「…あれはいいんだ。あれはここで2年前、フォークリフトに跳ねられて亡くなった子だ。さぁ早く。」
急かされて外へ出ると、マイクロバスが待っていました。
幽霊を見たのに、妙にリアル過ぎたので怖くはありませんでした。
バスに乗り中を進むと、空席にトイレで見た、その幽霊が座っていました。
タータンチェックのシャツが強烈な印象に残っていたので、間違いないです。
うわっ!と思いましたが、気付かぬ振りをしてやり過ごしました。
駅に着いて皆がバスを降り、各々帰ろうとする中。
その子も改札にいました。
つい気になって目線を送っていたら、振り返った時に目が合ってしまいました。
私が蛇に睨まれた蛙のように固まっていると、ニヤリと笑って3人組の男性の後ろにぴったりくっつき、改札を抜けていきました。
その男性達がその後どうなったか、私には知る術もありません。
せめて何事も起こらないよう、祈るばかりです。
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