恐怖の泉

実話系・怖い話「黒いもの」

私は介護の仕事で出入りしている者です。
これはごく普通の田舎の家、おじいちゃんがいて、その子供が介護して、さらに孫やひ孫がいて…と、にぎやかなご家庭で体験した話です。

その家にはおじいちゃんの世話をしに訪問していました。
もちろん24時間ではありません。1日に1時間程度のかかわりしかありませんでした。

その方にはとても大好きな趣味があり、寝たきりになりながらもその趣味の話を思い出し、私にしてくれるというのが常でした。
そのため私もおじいちゃんと世間話をしに行っている感覚で向かっていたのです。

それがある時から、少し変なことを言うようになりました。
認知症もなく頭はしっかりとしている方でしたが
「自分はもうすぐ死ぬ」「怖い…」
というようになったのです。

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寝たきりでありましたが、すぐに危篤となるような全身状態ではありません。
まだまだ介護さえ受ければ、在宅で生活していけます。
そのため私は「そんなことはないよ。頑張りましょう。」と励ましていたのですが…聞いてしまったのです。

おじいさんが言うに、なんでも数週間前からお腹のあたりに黒いものが乗っているようになり、それが日増しに大きくなる。
自分が押しつぶされそうだし、それが時に顔に見える。
顔に見えたときには、早く来い…と呼ばれるというのです。
私は怖くなりながら話を聞いていましたが、娘さんから詳しい説明を聞いて納得しました。

もともとその家系は、みんな霊が見える能力を持っているそうです。
そしておじいちゃんには伝えていなかったけれど、つい最近おじいちゃんのいとこにあたる方が亡くなったそうです。
遠く離れているし、亡くなったと知るとショックにしかならないので、おじいちゃんには伝えていない。
もしかすると、幼少期を一緒に過ごした仲良しいとこなので、呼んでいるのかもしれない…と話していました。

そのおじいさんが、夜中に錯乱状態となり高熱も出て、救急車で運ばれる事態が起きました。
治療を受けたにも関わらず、原因が不明でなかなか体調は良くなりませんでした。意識もぼんやりしていたようで、うわ言のように昔のことを話していたそうです。
娘さんは、ひょっとしていとこと話をしているのではないか、そして1人では寂しいから、おじいちゃんを連れて行こうとしているのではと、恐怖を感じたと言います。

何日かしてやっと意識がはっきりして、おじいさんの体調も無事回復してきました。
退院されて久しぶりに訪問するも、やはりおじいさんは相変わらず
「お腹の上の黒いものが大きくなっている」
と訴えてきます。
さらに最近では時々
「こっちに早くおいで」「なんでそこにいるの」「私を残さないで」
等と呼びかけられているそうです。

今ではおじいちゃんは、少し恐怖は感じるものの諦めたようで、黒いものに向かって話しかけるようになっています。
内容は戦後の話や昔遊んだ話のようですから、やはりいとこなのかもしれません。
傍から聞いている私にはぶつぶつ呪文のようにも聞こえるので、恐怖しかありませんが…。

いまいち実感の湧かない内容ではありますが、私が体験した話でした。

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