恐怖の泉

実話系・怖い話「2段ベッドの感覚」

小学生の時、私は近所に住んでいる方に譲っていただいた2段ベッドで眠っていました。
上の段は姉が使っており、下の段とベッド下が私のテリトリーでした。

ベッドの前は、ちび○子ちゃんと同じように姉と布団を並べて寝ていたので、完全に自分のスペースとなるベッドを貰えた時は本当に嬉しかったのを覚えています。
ですがそのベッドを使用していた期間は小学校3年生から5年生の中頃までと、あまり長くは続きませんでした。
もともと前のお宅で10年以上使用されていたものだったので老朽化が進んでいたのか、壊れてしまって処分せざるを得なくなったのもありますが…。
奇妙な体験をしたのです。

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そのベッドを使いだした時から、私が布団に入ってから眠りにつく直前くらいに、体がスッと5センチほど下に沈むような感覚を何度も体験しました。
わかりにくいかもしれませんが、体感的には揺れが少なく動きの速いエレベーターで下に降りるときに、最初に体がスンッと下る時のような感じです。

スプリングの効いたベッドやウォーターベッドと違って、底板は畳より硬くてしっかりしていたし、その上に敷いていた布団はちょっと硬めな普通の布団なので、飛び乗ろうが寝返りを打とうが沈みこんだりすることはありません。
初めて感じた時は地震か?と思って飛び起きたのですが、姉と親に聞いても何も無かったと言われるし、ニュースを見ても地震速報は入ってきません。
そもそも地震の少ない(というかほぼない)土地に住んでいたので、当時は地震の体験があまり無く、どんな感じなのか知らなかったのですが、今なら違うとはっきりわかります。
起きている自覚がある時にはその感覚はなく、決まって目を閉じてしばらくしてから、夢現をさまよっている状態の時に起こりました。

同じベッドの上段で寝ていた姉も、もしかしたら同じようなことを感じたことがあるかもと思って聞いてみましたが、姉は一度もそんなことはないと言います。
試しに1週間寝る場所を代わってもらいましたが、何もないからと怒られ気味に戻されました。
ちなみに上の段で寝ていたときも、私は1度だけいつのもスッと体が沈む感覚を感じました。
その感覚は1週間に2回くらいのペースで起こっていましたが、別に怖いと感じなかったため「あ、また沈んだな」くらいに思って、それからも普通にベッドで寝ていました。

ある日、寝る前に読んでいた漫画をいつものように枕元へ置いて布団に横たわりました。
布団の中でうとうとしていると、だんだんと意識が暗くなっていきます。
その時はなぜか「あぁ、今日はまた沈みそうだな」とはっきり自覚しました。
すると案の定、体が垂直にスッと下がる感覚を感じたのですが、その日はいつもと違って更に下へ下へと下がっていきます。

目は閉じているのに、なぜか壁と布団が見えていて、そのままベッドの下まで視界がスライドしていきました。

ベッドの底板のベニヤとベッド下に置いていたおもちゃ箱が見えた時
「ヤバい、このままじゃ地面の下まで行っちゃう?!」
と思って慌てて体を起こすと、そこは普通に自分の布団の上でした。
今まで何度も沈んでいたように感じていたのはせいぜい数センチくらいだったのに、その日は確実に20センチほど下に「落ちた」と感じたのです。

さすがにその時は心臓がドンドンと早打ちし、冷や汗が止まらなくなりました。
震える手で布団を上から強く押してみても、布団と底板の硬い手応えしかありません。
初めて恐怖を感じ、その日は数年ぶりに母の布団へと逃げ込みました。

次の日、学校から帰ってベッドを見ると、下段の上半分の底板が少しだけ沈んでいました。
調べてみると、支え板の部分が割れてぶら下がった状態になっていたのです。
前日の夜に押した時には、割れるような音も無かったし異常は無かったのですが…
もう古いし修理せずに捨てようという話になり、2段ベッドは解体されて粗大ごみの日に捨てられました。

その日以来、私は布団で寝ていてもベッドで寝ていても、あの体が沈み込むような感覚を体験しなくなりました。
あのベッドがなにか特別だったのか。体が下に沈む感覚はひょっとしたら幽体離脱だったのか。
今となってはわかりませんが、あのまま沈んでいたらどこまで行っていたのかなと、少しだけ気になります。

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