恐怖の泉

人間の怖い話「恋愛相談に乗ったら」

この出来事があったのは、私が大学を卒業後、就職してからしばらく経った頃でしょうか。
きっかけは、大学時代の友人に誘われて参加した飲み会でした。

飲み会には友人が連れてきた女友達が数人いたのですが、その中の1人が少し落ち込んでいる様子でした。
自分で言うのも何ですが、私は周囲の友人たちから「優しい」とよく言われていて、親からも困っている人がいたら助けるように、と言われて育ちました。
まぁただの世話焼きなのですが、目の前に困っている人がいたら相談に乗ったりと、とにかく見て見ぬ振りが出来ない性分なのです。
そのため落ち込んでいる友人の女友達がどうしても気になって仕方なかったので、いつものように何とかしてあげたいと話しかけてみたのです。

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初対面の男から話しかけられる訳ですから、彼女も最初は警戒している様子でした。
それでも私が根気強く話かけるものですから、次第に会話のキャッチボールが出来始めます。
そろそろかな、と思った私が「何か悩みごとでもあるの?」と尋ねてみると、どうやら最近恋人と別れてしまったようで、落ち込んでいるのだと教えてくれました。

彼女を励まし元気付けようと、私は恋愛相談に乗っていきます。
すると彼女から突然
「私のこと、どう思いますか?」
と聞かれました。

正直に言うと好みのタイプでは無かったのですが、面と向かって好みじゃないなんて言うのは失礼極まりないですし、割りと可愛らしい見た目ではあったのでとりあえず
「可愛いと思いますよ。」
と返答します。
すると彼女は喜んでくれ、飲み会が終わる頃には元気な笑顔を見せてくれたので、その時は本当に良かったと思っていました。

その飲み会から2週間後くらいでしょうか。
仕事が終わって夜道を1人で歩いていますと、突然後ろから話しかけられました。
驚いて振り返ると、そこには飲み会で恋愛相談に乗ってあげた、彼女の姿がありました。
「こんな所で会うなんて偶然ですね。」
家が近いのかなと、その時はとくに考えもせず軽く会話をして、その場で彼女と別れたのですが…どういうわけかその日からよく彼女と会うようになりました。

仕事終わりの帰り道だけではなく、通勤の駅で会ったり、休日でも外出先でばったり出会うなど、数日おきに会うような感じです。
こんなに偶然が重なることがあるんだなと思いつつ、ちょっと違和感だけは感じていました。

そして決定的な出来事が起こります。

ある休日、私は県外のキャンプ場に会社の同僚達と行くことになりました。
何故か集合場所に、恋愛相談に乗ったあの彼女がいたのです。

念のため、同僚たちにそれとなく聞いて見たのですが、彼女との知り合いは誰1人いません。
キャンプの事は会社の同僚達にしか言っていませんから、彼女に知れ渡るはずもありません。
なのに、何食わぬ顔をして彼女が集合しているのです。

これは一体どういうことなのだろう…と混乱していると、同僚の1人から
「ひょっとしてストーカーでもされてるんじゃない?」
と冗談っぽくつつかれました。
その時は「そんなわけ無いだろ」と答えたものの、この事態はそれ以外考えられません。
とりあえず仕方がありませんから、私の友人ということで彼女もキャンプへ連れて行くことになりました。

キャンプは何事も無く楽しく終える事が出来ましたが、私としては気が気ではありません。
彼女は一体、何を考えているのか…。
数日後、やはりまた仕事の帰り道で彼女と遭遇しました。

悩んでいるのも性に合わないので、私は思い切って尋ねてみました。
「俺のことをつけてないか?」
すると彼女は当然のように答えます。
「そうだけど問題でもある?」

それを聞いた瞬間、私は鳥肌が立ちました。
「だったらもう止めてくれ!」
強めに言ったのですが、彼女は全く悪びれる様子も無く
「あなたのことが好きだから絶対に止めない。」
と言い放ちました。
その時、私を見つめる彼女の目が本当に怖くて、微動だにできませんでした。
彼女はそんな私を見て「また来るね」と笑顔で言ってその場を去っていきました。

それからはどういう訳か、彼女が私の前に直接現れることは無くなりました。
この状況だとホッとするどころか、それが逆に怖くなり、常にどこからか見張られているような感じがして精神的に追い詰められます。

毎日を怯えるように過ごしていると、ある日、自宅玄関のドアノブに白い袋が掛けられていました。
中身を確認したら肉じゃがの入ったタッパーが入っていました。
袋の中には手紙も入っていたので恐る恐る確認すると
「あなたの好きな肉じゃがを作りました。食べてください。」
という言葉とともに、彼女の名前が書いてありました。

私の自宅が特定されている!しかも私は別に肉じゃがが好きではない!
もうこれはダメだと思いました。

警察に相談しようかとも思ったのですが、被害と言って大事にするのも違う気がしました。ちゃんと解決するかも分かりません。
共通の友人に事情を話した上で彼女を呼び出してもらい、改めて話をするしかありません。

そして友人同席の上で場を設け、彼女へ改めてストーカーを止めるように伝えました。
彼女は以前と同じように
「あなたのことが好きだから絶対に止めない。」
の一点張りです。
私も引き下がる事は出来ませんから
「迷惑だから本当に止めてくれ!」
と強く何度も訴えたら、突然彼女が怒り出して
「あんなに相談に乗ってくれたのに!」「私のこと可愛いって言ったでしょ!!」
と捲し立てるように言ってきました。

私としては単に善意でやったことなので本当に驚きました。
完全な思い違いだし、これがストーカー行為に走る人の思考なのだな…と、私の中にどうとでもなれという諦めの気持ちが芽生えます。

「アレはただ、善意でやったことで君には全く興味がない…」
思わず私の本音が漏れました。
それを聞いた彼女はよほどショックだったのか、もう止めるとだけ言ってその場を去っていきました。
その様子は、恋愛相談に乗った日の彼女の姿と全く一緒でした。

その後私は疲れてしまい、仕事を辞めて地元に帰りました。
私にとっての善意は、相手にも善意として届かないかもしれない。
善意というのは本当に難しいと強く思います。

せめて彼女が誰か良い人を見つけて、私のことなど忘れてくれていることを願うばかりです。

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