恐怖の泉

実話系・怖い話「ピアノの音」

私の通っていた高校は女子校で、とても綺麗でおしゃれな校舎でした。
一方で、敷地の片隅には戦前に建てられた2階建ての古臭い木造の校舎もありました。

入学したての頃は取り合わせが悪くて違和感を覚えていましたが、学校生活に慣れてくるとさほど気にもならなくなり、当たり前にそこにあるものとしてとらえるようになりました。
建物自体は頑丈なようで、1階は部活のために解放されていましたし、私の部もその木造校舎の中にありました。

2階はというと、なぜか全て鍵がかけられて外から板で打ちつけられていました。
先生に理由を聞くと
「使わないのに開放していると、誰かが入っていたずらでもしたら困るからじゃない?」
と適当な答えで、よくわかっていないようです。

そんな感じですから、その木造校舎はいつしか「いわくつきの校舎」のように言われ始めました。

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噂ではありますが、昔壊そうとしたけれどその度に人が亡くなったから壊せなくなったのだとか、壊そうとすると女性の叫び声が聞こえてくるとか…
そんな怖い話が囁かれていました。
実際に、何かがあると思わせる教室もありました。

階段を上がったところにある教室は、他と違って内側にも細い板がクロスに打ちつけられていました。
外から板を剥がしただけでは侵入出来ない厳重さには、異様な空気が漂います。

一度だけ、扉の隙間からその部屋の中を覗いたことがありました。
中には使わなくなったイスや机の他に、ピアノが置かれてあるだけです。
好奇心から中に入れないかと友達と試してみましたが、やはりどうしても外からは入ることができなくて、それ以来近づくことはありませんでした。

3年生になったある日、朝から降っていた雨が激しさを増して、警報が出たから帰宅することとなりました。
生徒達がみんな帰って行く中で、私と友達数人は木造校舎の部室へ向かいました。
雨が少し小降りになってから帰ろうと思ったのです。

時間つぶしに、私達は怖い話を始めました。
雨と薄暗い部室というシチュエーションで気分は盛り上がり、誰かが「2階を探検しよう」と言い出しました。
とは言っても、2階は廊下以外に侵入出来ず何もありません。
「こういうのは気分だから」
と友人が言うので、暇だった私達はとりあえず皆で一回りだけしてみることにしました。

長い廊下の両端に階段があります。
どっちの階段から上るか相談して、あのピアノがある教室の階段から2階へ上がることに決めました。
普段なら別に怖くもなんともないのに、怖い話をしたあとのせいかやたらと怖くて、みんなで固まりながら恐る恐る階段へ足をかけます。

「怖い話をすると霊が寄って来るらしいよ」
誰かがぽつりと言って、やめてよ~と苦笑いが起きた時でした。

あの教室から、ピアノを弾く音が聞こえてきました。
気のせいなどではなく、激しい雨の音に交じってはっきりとメロディーが奏でられていました。

私達は怖くなって、一斉に部室へと猛ダッシュしました。
「どうする?先生に言いに行く?」
とも相談しましたが、警報が出ているのになぜ残っているのかと怒られるのも嫌で、それはやめることにしました。

ピアノの音は、その場にいた全員が確かに聞いていました。
実はどこからか人が入れる箇所があって、そこから侵入した誰かがピアノを弾いていたのでは?
でもあんな大雨の日に、わざわざ手間をかけて侵入してピアノなんて弾くでしょうか…。
友人達とはいろいろと可能性を話し合いましたが、その後誰も教室へ近づくことはありませんでした。

30年以上も前の話ですが、今でも忘れられない出来事です。

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