恐怖の泉

実話系・怖い話「赤いブレスレット」

5年ほど前の7月、仕事で出向いた先に綺麗な川がありました。
車を止めて近くで見ると本当に綺麗な場所で、私の自宅からも車で1時間ちょっとの場所です。
これは良いスポットを発見したと思った私は、当時付き合っていた彼女とそこでデートをすることにしました。

日曜日に行くと、家族連れで来ている人も多くいます。
私達は人が少ない岩場の方へ移動し、景色を眺めたり浅瀬に足を入れて遊んだりしていました。
私はしばらく遊んだところでお腹が空き、水辺近くの岩場へ腰を下ろし足を水につけて、持ってきたおにぎりを食べようとすると…
水中に何かが見えました。

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最初は何か分かりませんでしたが、じっと見てみると手のように見えます。

「え…手…?」

現実感を感じることが出来ないままその手を見ていると、手から先が見えてきました。
そこには、水中で沈んだまま水に流されていた男性がいました。

死体かと思いましたが目が合い、流されても目線がずっとこちらを見ているので生きているようです。
すると手が動き出し、溺れているらしく水面へ上がろうとしています。

当然助けたかったのですが、私は泳ぎが得意ではありません。
また溺れている人に正面から手を出すと引っ張る力が強いので、こちらが水に引き込まれ危険と教わっていました。
何とかしなければと思いながら、男性から目を離さず近くの川沿いを移動します。
すると事態を知った彼女が来て、その人が流されている近くの川に入ろうとしたため
「待って!足入れないで!」
と言うと、その瞬間水中から赤いブレスレットを手首に付けた手が出てきました。
彼女が手に気付き、悲鳴を上げると水中に引っこみました。

水中を確認すると男性は漂った状態でしたが、ひざ下までの浅瀬に辿り着き、止まったもののぐったりしています。
近くにいた男の人と一緒に意識の確認をすると、男性は喋ることは出来ませんでしたが、うなずいたので意識の確認は出来、呼吸が落ち着くのを待ちました。

呼吸が落ち着いた男性は、上流で泳いで遊んでいたら流れが速い場所へ入ってしまい、戻ることが出来ずに水の流れに流されるままになっていたと言います。
水流で水中に引っ張られるようになり、必死でもがいていたそうです。
上流を見てみると、その男性の家族がこちらを見ていたので手で大きく丸をして生存を知らせると、何度も頭を下げていました。
後に家族と合流した男性が抱き合っている姿を見て、私もホッとしました。

そこでふと溺れていた男性を見てみると、手には赤いブレスレットがついていません。
私は
「赤いブレスレット、外れちゃったんですかね。」
と言うと、男性は何を言われているのか分からない表情をします。

男性は
「ブレスレットしてないですし、手も出してないです。必死だったからもしかしたら手を出したかもしれないけど…ブレスレットは付けてないです。」
と仰っていました。

ではあの赤いブレスレットを付けた手は一体…?

私も彼女も、確かに川から伸びたその手を見ました。
彼女に至っては、手に気付いて悲鳴を上げています。
ひょっとして、男性が溺れたのは赤いブレスレットを付けた手が原因なのでは?と、私は考えてしまいました。

彼女はこういった話が苦手なので、これ以上話題にすることは避けました。
綺麗で良い場所でしたが、これ以来行く気にはなれません。

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