恐怖の泉

実話系・怖い話「メールの返事」

これは私が今から数年前、実際に体験した話です。
尚、出て来る名前は全て仮名です。

久しぶりに連休が取れた私は、家族で温泉旅行へと向かっていました。
温泉が好きだった私でしたが、ここ最近は忙しくて足を運べておらず、久しぶりの出発です。

大はしゃぎな子供2人と音楽を聞いてノリノリな妻を乗せて、車を走らせている時でした。

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妻「あれ?あそこってお友達のお家じゃなかったっけ?」

妻の声でチラッと横目をやると、目立った大きな家で葬式が行われています。
その瞬間、ドクン…と心臓の脈が速くなり、ハンドルを握る手が汗ばみます。

私「え…マジか!亡くなった人の名前何て書いてる?」
思わず私はそう、妻に聞き返しました。
妻「あ~、何か5、6人くらい書いてる。家族で事故にでも遭っちゃったのかな。」
私「マジで!Mさんって名前ある?」
妻「ごめん、もう見えなくなったわ…。」

その家は、私の小学校からの友人…と言いますか、学生の頃付き合っていたMが嫁いだ家でした。
今でも地元の集まりとなると顔を合わせることがあり、最後に会ったのは去年の忘年会でしょうか。
結婚10年になる旦那さんとMは今でもラブラブなようで、既婚者といえば相手の愚痴を言うはずが彼女だけは良い事しか言わない所が印象的でした。
Mの旦那さんは地元の名士で、若くして建築会社の要職に就くほどの方でした。
Mが幸せになってくれて良かったなと、謎の上から目線を持ちつつ、どこか寂しさや嫉妬を感じたのを覚えています。

そんなMの家で、葬式。
とても嫌な予感がしてきます。

無事温泉宿へ到着し、居ても立っても居られない私はMへメールを送信しました。
「今Mの家の前通ったら、お葬式してたけど…事故でもあった?」
確かそんな文を送ったと思います。
ハラハラしながら返事を待つと、携帯がバイブレーションで震えました。

私はその瞬間、Mは大丈夫だった…と安堵すると同時に、愛する家族を失った人に何と声をかけたらよいのだろうかと悩みました。
自分に置き換えて想像するだけで、思わず涙が溢れます。
何か出来る事があれば、支えてあげたい。純粋に助けたいという気持ちで携帯を開き、Mからのメールを読みます。
Mからの返事はこう書かれていました。

「私も家族もみんな死んじゃった。」

頭が混乱し、意味が分かりませんでした。
すると次の瞬間、地元仲間のTから電話がかかってきました。

T「おい、Mちゃん亡くなったってよ…。」
私は言葉が出ず、絶句してしまいました。

Mは家族総出で外出した際、崖から車ごと海へ落下した事故で亡くなっていました。
恐らくハンドル操作を誤った事故だろうという話です。
Mはもちろん、旦那さんもお子さんも一緒に帰らぬ人となったそうです。

私の携帯には、Mから来たはずのメールがありませんでした。
私が送った文はあるのですが、どこを探してもMから来た「私も家族もみんな死んじゃった。」という、見たはずの文がありません。

気が動転した私の錯覚だと思いたいのですが…。
何とも不思議な体験でした。

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