恐怖の泉

実話系・怖い話「後をつけてきた」

1年前まで、夜に1人で家の近所を散歩する事にハマっていました。
夜といっても大体22時か23時頃ですし、街頭もあってチラホラと人通りもあるので、1人で歩いていても全く怖くありませんでした。

仕事が早く終わった日に夕飯を食べた後、お気に入りの音楽を聴きながら20分程あてもなく歩く時間が、ダイエットや暇潰しにもなってハマっていました。
しかしある夜の事、その日は何だかいつもより空気がじめっとしていて、月もほんのり赤く色づき少し気味の悪い雰囲気が漂っていました。
しかし見たいTV番組もなく暇だったので、いつものように軽い気持ちで散歩へ出たのです。

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私のいつも歩くコースの途中には小さな公園があり、そこで時々ジュースを飲んでぼんやりする事もありました。
その日も近くの自販機でジュースを買って公園のベンチに座り、一日を振り返っていたのですが…ベンチの後ろの茂みからいきなりガサッと音がしたのです。

最初は「たまに見かける野良猫かな?」と思っていましたが、ガサガサと茂みをかきわける音と共に小さな声も聞こえます。
ブツブツと低い声で「…み…まえ…み…つ…」と同じ言葉を繰り返し呟いており、その声の合間にベキッベキッと何か硬い物を折るような鈍い音も聞こえ、怖くなった私は震える足を無理やり動かして急いで家へ帰りました。

家に着いて玄関扉にしっかりとチェーンと鍵をかけ
「あれはきっとおかしな人だったんだ」
と気分転換にお風呂に入ろうとした時に、ピンポーンとチャイムが鳴らされました。
その時の時刻は丁度夜中0時前、近くに友人は住んでいないしこんな時間に訪ねてくる人なんてあまりいないはずです。
するとまたあのベキベキと何かが折れる音、そして何かを呟く声が聞こえてきました。

公園のあいつが後をつけてきたんだ!という恐怖心がありましたが、一体あの音は何だろうという好奇心が勝ってしまった私は、よせばよかったのにそっと覗き穴から外を伺ってみました。

目線の高さにはいない、じゃあもっと下?と下に目線をやった瞬間、本当に後悔しました。

そこには物凄く痩せ細った老婆が、しゃがみ込んでこちらを睨んでいたのです。
老婆の周りには鳩でしょうか、少し大きめの鳥のような生き物が数羽散らばっていて、手元にも一羽います。
覗き穴からではよく見えませんが、首がおかしな方向に捻じれていて、羽根がない物もいて、そこまで考えた瞬間、強烈な吐き気が襲ってきて思わずその場で嘔吐してしまいました。

すると物音に気付いたのか先程まで呟く程度だったあの声が大きくなり、よりはっきり聞こえてきたのです。
「見つけた見つけたお前見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた」

いつの間にか気を失っていたようで、連打されるチャイム音と大家さんの「○○さん居る?大丈夫?」という呼び声で目が覚めました。
ふらふらと立ち上がり玄関扉を開けると大家さんと両隣の住人さんが居て、「扉の前が大変な事になってるよ!」と言うのです。

ふと足元に目をやると、羽根をもがれ首が捻じれた鳩が4~5羽程散らばっていて、あの光景は夢じゃなかったんだと絶望感が押し寄せました。

その後警察に通報して事情聴取等もされましたが、犯人は捕まらず悪質な悪戯だろうという事になりました。
あの夜の老婆を見かけた人はいないようで、両隣の住人も誰もあの声や音を聞いていないそうです。
あの老婆は生きている人間だったのでしょうか、それとも…。

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