恐怖の泉

実話系・怖い話「22時48分の足音」

これは私が中学3年生の夏休みに起きた出来事です。
女子校で演劇部に入っていた私は、同級生や後輩達と校内での合宿に参加していました。

4階建ての校舎の、4階にある3教室に畳を敷き、そこを寝泊まりに使うのが私の学校の恒例行事でした。
合宿の期間は部によって違いますが、私達は最長である1週間を取っていました。

私達が合宿に入ったのは夏休み初日だったので、まだ他の部はいません。
顧問の先生に聞くと、今年は他の部が合宿に入るのは遅いそうで、まるまる1週間は自分達演劇部だけという状況に私達はとても喜びました。
他の部と一緒なら食堂の調理室も分け合って使わなければならないし、冷蔵庫のスペースも少なくなってしまいます。
そういう煩わしさがないのは、とてもラッキーだと思いました。

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私達が1週間寝泊まる教室は、階段を上がったところにあるトイレの隣でした。
トイレの隣と聞けば嫌がる人もいるでしょうが、意外と人気があるのです。夜中にトイレがしたくなってもすぐに行けるからです。
1番良い教室を取り、快適に合宿がスタートしました。そして快適なまま終わるはずでした。
みんなそう思っていたのです。4日目までは…。

演劇部といっても、体育系並みにハードな運動をしなければなりません。
舞台の上では1~2時間動きっぱなしなので、それに耐えるスタミナと筋力をつけなければならないからです。

連日の長距離走と腹筋、背筋、ストレッチ…。
夕食も喉を通らないくらいバテバテになって、夜は死んだように眠り、また朝を迎える。
ひたすらその繰り返しです。

しかし人間とはすごいもので、3日も経つと慣れが出てきます。4日目には寝る前に会話を楽しむ余裕もありました。後輩達は疲れですぐに寝入ってしまいましたが。
3年生達はしばらく会話を楽しんでから「じゃあ、寝ようか」ということになりました。
その前に、友達の1人がトイレへ行くというので私も行くことにしました。

トイレは隣なのですぐに行けます。
中へ入ると手洗い場があって、その奥にトイレが両側に5つずつ並んでいる造りです。
私と友達は隣どおしの個室へ入ります。

私は癖で、トイレをする際に水を流しながらします。
すると隣の個室に入っている友達が何か話しかけてきました。

「え、何?」

水が流れる音で聞き取れないため、尋ねます。
それでも友人はずっと話続けています。

「何~?聞こえないよ。」

何度そう聞き返しても構わず話し続ける友人。
仕方ないから後で聞こう…そう思って個室から出ます。
手洗い場で手を洗っていても、まだトイレの方では友達が1人話しています。

そのうち友人がトイレから出てきたので、笑いながら「何1人で話してたの?」と聞くと、友達はむっとした顔をして「話しかけてきたのはあんたでしょ?ずっと話してて何言ってるか全然わからなかったよ!」と言ってきます。

その時気づきました。
私達2人しかトイレへ行っていないし、その2人が出たはずなのに、奥の個室からまだ話声が聞こえているのです。

話している内容はわかりません。
聞き耳をたてていると、複数の女の子が楽しそうに笑いながら会話をしている感じです。
私と友達は無言のまま顔を見合わせて、しばらく身動きもできませんでした。

次の瞬間「ガタンッ!」と机が倒れたような大きな音がしてビクッと飛び上がりました。
そして今度はバタバタと、階段を駆け上がって来るような足音が聞こえます。

私と友達は慌てて隣のみんながいる教室へ駆け戻り、ドアを閉めました。
教室に戻ると全員居るので、誰かのいたずらでないことはすぐにわかりました。

「どうしたの?」
不思議そうに聞く他の友達のそばに近づいてさっきの出来事を話そうと思ったら、廊下をバタバタと足音が通り過ぎて行きます。
それで事情を察したのか、みんな無言のまま寝床に入って何も言わないままそれぞれ眠ることにしました。
その時、本当の恐怖を味わうと声も出なくなるんだと思いました。

翌日の朝、みんなで話し合いになりました。
あれは気のせいだったのか、心霊現象だったのか。
顧問の先生に相談しても「寝ぼけてたんでしょ」で済まされるだけです。

その後、夜中の足音は最終日の夜までずっと続くことになりました。
時間は決まって22時48分。
階段を駆け上がって、そのまま教室の前を駆け抜けて行く足音。1人ではなく、複数人聞こえました。

あの足音の正体は何だったのか…わからないままです。
今では、学校で合宿する時は早く寝るという決まりだけが受け継がれているようです。

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