恐怖の泉

実話系・怖い話「36人目の子」

これは私が小学校5年生の時に行った林間学校でのお話です。

宿舎で食事を取った後、屋外でキャンプファイヤーをしていたのですが、先生から突然
「帰りは肝試しやるからな。」
と言われました。

予定表ではキャンプファイヤー後はそのまま宿舎に戻るはずだったのですが、想定外の出来事でクラス中大パニック。
テンションが上がる子や恐怖で固まってしまう子がいる中で、大のおばけ嫌いだった私は恐怖で怖気付いてしまいました。

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遊園地のお化け屋敷ですら怖すぎて入る事が出来ない私でしたが、ビビって腰が引けた姿をクラスの女子に見せたりなんかしたら最悪です。
何とか周りのテンションに合わせて、嘘の自分を演じていました。

肝試しの内容は、先生の言われるがままに男女ペアとなり、順番に暗い夜道を歩いて宿舎まで帰るというものです。
私はAさん(仮称)という、色が白くて大人く無表情な女の子とペアになりました。

クラスメイトなのに一度も話した事が無い子で
「あ~ぁ、ハズレ引いちゃったよ。可愛い子が良かったのに…Aさんと行ったら怖さ倍増やん。」
と、失礼なのは承知で内心落胆しながら、目も合わすことなく順番を待っていました。

そしていよいよ私達の番となり、暗い獣道を歩いて行く事に。

途中先生が草むらから突然「わっ!」と驚かしてくるような安っぽい仕様でしたが、ビビリの私にはそれでも十分恐怖で、身体がガチガチの状態です。
しかしAさんはスゴいもので、相変わらず無表情のまま先生の脅かしにもリアクション一つ取らず、足元が見えにくい道も恐れる事無く堂々と歩いて行きました。

「こいつ普段から感情がないと思ってたけど、こんな時には頼りになるんだなぁ。」
などと見直しつつ、私はAさんを盾にするような形で何とか肝試しを乗り切る事が出来ました。

最後のペアが宿舎へ到着し、先生が人数確認をしていると…
「あれ?おかしいな。」
首をかしげています。
どうしたのかと誰かが先生に尋ねてみると

「ペアになれって言ったけど、よく考えたらウチのクラス35人やんか。1人余るはずなのに、全員ペアで行ってたよな!?」

クラス全体が騒然とする中、とりあえず確認の為ペアとなった状態で整列する事になりました。
肝試しの順番で並んでいき、私の隣にはAさんが…と思いきや、Aさんは後ろの方にいます。
「早く並べよ。」
とAさんに声をかけると、普段無表情なAさんが
「えっ!?私B君とペアやったんやけど…。」
と言うではありませんか。

その瞬間、ペアの相手がいない私に視線が集まり
「お前一体誰と行ったんや。」
と、一瞬にして場が恐怖で凍りつきました。
私もあまりの恐怖で気分が悪くなり、先生に付き添われて宿舎の布団で横になりました。

深夜2時ごろ。
昼間の山登りの疲れと、肝試しの恐怖で気を失うようにいつの間にか眠り込んでいた私でしたが、何故か目が覚めてしまいました。
宴会場のような部屋に布団を敷いて、クラスメイト全員が雑魚寝していたのですが、当然ながら全員眠っています。
再び寝ようとするもなかなか寝付けず、横になっていると…
私の近くにあった窓から、誰かに見られているような感覚を覚えました。

私は恐怖のあまり、隣で寝ている友人に助けを求めようしましたが、声が出ないだけでなく体もピクリとも動かない金縛りの状態になっていました。
視線は私へ向かって近付いているような感覚に変わり、もしかしたら肝試しの時にいたあの女の子が来ているのではと思うと、恐怖で全身が尚更硬直し
「頼むから来ないで!」
と心の中で祈り続けているしか、術はありませんでした。

気がつくと日は昇り、辺りは明るくなっていました。いつの間にか眠っていたようでした。
私の体験した話はこれだけで、その後は特に何もありません。
ですが数十年経った今でも、36人目のあの子は一体誰だったんだろうかと思うと、背筋が凍りつくのです。

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