恐怖の泉

実話系・怖い話「友人のお祓い」

私が通っていた中学校は女子校だったのですが、そこで初めてできた友達は少し他の子と感じが違っていました。

普通に話している分には明るくて楽しい。
けれども、ふと誰もいない方を見て怖い顔をしていたり、突然なんでもないところで怯えたように悲鳴を上げたりするものだから、クラスの皆は次第に彼女から離れて行きました。
孤立してゆく彼女の姿に、私はとても心を痛めました。

私自身は小学生時代、いじめにあっていました。
クラス中から無視をされて孤立してしまい、とても辛い時期を過ごしたことがあります。
そんな自分と彼女が重なったのかもしれません。
できるだけ彼女の力になりたいと、私は決意していました。

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彼女の不思議な行動の原因が知りたいと思い尋ねてみても、最初は「何でもない」としか言ってくれませんでした。
ですが何でもないはずはありません。
私が何度もしつこく訊くと、真相を少しづつ話してくれるようになったのです。

彼女は幼い頃から霊感が強かったそうです。
霊を引き込んでしまう体質だそうで、もう何度も憑りつかれてはお祓いするを繰り返していました。
そして今回もまた、憑りつかれてしまったと言うのです。

今回は子供の霊だ、と真面目な顔をして話す彼女に、私は正直言ってどこまで信じてよい出来事なのかわかりませんでした。
ひょっとして嘘かもしれない。嘘でなくてもどこか精神的な疾患があるのかもしれない。
思わぬ返答に私も引きそうになりましたが、ここで私まで離れてしまったら彼女は学校に来れなくなってしまうと思って、なんとか踏ん張りました。

「じゃあ、お祓いしなくちゃダメじゃない。」

そう言った私に、彼女は「今、準備してる」と答えました。

神社に人形を預けてある。
今はその人形に子供の霊を閉じ込めているのだけれど、すごく怒ってて頻繁に蛇や虫などの幻を見せるのだそうです。
話を聞いてからも、彼女が怯える度に心配しつつも半信半疑な私でした。

それがある日、彼女からお祓いに付き添ってほしいと頼まれました。
お祓いの日にちが決まったけれど、怖いからそばにいてほしいと言うのです。
不謹慎という言葉が適切なのか分かりませんが、お祓いなんて本当にあるんだ…と興味を持ってしまった私は「わかった」と返事をしてしまいました。

お祓いは彼女の家の近くの神社の一棟で行われました。
祭壇の上にはよくわからない儀式に使う道具がいくつか置かれてあって、真ん中にごく普通の目を閉じた人形と卵が一つ、置かれてありました。
彼女は白装束を着て祭壇の前に座らされ、両脇に彼女の母と祖母と私が座りました。
彼女の両親は離婚していたそうで、父親の姿はありません。

お祓いが始まると、神主が呪文のようなものを唱えながら彼女の体を稲のようなもので叩きます。
すると彼女は悲鳴を上げながらもがき苦しみ始めました。

その光景はまさに異様という他無く、全く現実味の無い光景でした。
もしかして彼女ではなく自分がおかしくなっているのではないと、錯覚さえ覚える程です。
それでも目が離せずお祓いの様子を見ていると突然、祭壇にあった人形が動いたと思うと同時に何かが私の前に飛んできました。

それは人形の首でした。

私の少し前に落下した首は、ころころと勢いのまま転がってきて私の数センチ前で止まり、閉じていたはずの目をカッと見開きました。
私が固まっていると、神主は私にも呪文を唱えながら稲で体を叩き始めました。
尋常ではない状態が続いてしばらくすると、ようやくお祓いが終わったらしくて、最後に卵を割りました。
不思議な事に、中身は空だったのです。

神主が言うには、今回の霊は子供と蛇の合わさったもので、とても強い力を持っていたそうです。
人形の首が私の方に飛んで行ったのも、逃げ場を失ったから私に霊が憑りつこうとしたのだそうです。だから私のお祓いも必要だった、そう言うのです。

まるで嘘みたいな話ですが、これが当時の私の眼前で行われていた出来事です。
やはり夢を見ていたのではないかと思うこともありますが、今でも良好な私と彼女の友達関係をみるに、事実と受け入れるしかありません。
これ以来、私はおもちゃ屋さん等で人形を見ると身震いがしてしまいます。

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