実話系・怖い話「空襲の爪痕」
私は中学生の時、A県にある空襲の跡地を母親と訪問しました。
そこは第二次大戦終結の8月15日、アメリカ軍によって最後の空襲を受けた場所で、私はこの出来事を中学校の宿題の作文で題材にするため、取材をしようと思いついたのです。
お寺の住職さんに案内をして頂き、境内にある墓地へ向かうと…
そこには爆弾によって穴の開いた墓石や、一部が欠けた墓石が沢山存在していたのです。
それだけでなく、戦前からあったという六地蔵も、首が吹き飛ばされた無残な姿で残っていました。
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想像していたよりも酷い惨状にショックを受けた私達に、住職さんはアメリカが投下した爆弾の破片を見せながら、当時の話をしてくれました。
被爆し傷ついた人たちは、近くの学校やこのお寺に避難してきたということでした。
当時中学生だった住職さんは、重度のやけどを負い瀕死の我が子を抱いている母親や、爆弾の破片によって腹を切り裂かれ内臓が飛び出したまま苦しんで亡くなっていった人達の事を忘れることができない、と語って下さいました。
その後も住職さんのお話を聞きながら、広い墓地を歩いて回ります。
およそ墓地の中心に差し掛かった所で、空襲で亡くなった方々を供養するための塔が見えてきました。
私達はこの地を訪れた証に、その供養塔を写真へ収める事にしました。
早速、供養塔をバックにして私と母が一緒に写るように、住職さんへシャッターを切ってもらいました。
1枚目を撮り終えて、念のためあと2~3枚写真を撮ろうとした時、異変が起きました。
住職さんがいくらシャッターを押しても、写真が撮れなくなってしまったのです。
さらに異変は続き、供養塔の下に敷いてあった砂利が、突然私の足に纏わりついてきたのです。
私は恐怖のあまり声も出せず、ただただじっとしていることしかできません。
カメラをいじっていた母親と住職さんは、私の異変に気付いていないようでした。
恐怖から私は自身の足をしっかり見る事が出来ませんでしたが、空襲で亡くなった方々が助けを求めて自身の足にすがってきている…
そう感じた私はとっさに目を閉じ、供養の気持ちを込めて合掌しました。
しばらくすると、足に纏わりついた砂利は地面に落ちていきました。
しばらくカメラをいじっていた母親と住職さんは
「これ以上撮影はしないでくれという死者からのメッセージかもね」
と口をそろえて言っていました。
私はもう少しリサーチしたいという気持ちもありましたが、異変を感じた事もあり取材を終わらせました。
後日、取材の時に唯一撮ることができた写真を見て背筋が凍りつきました。
供養塔をバックにした私の足元に、青い顔をした丸刈りの少年の生首がはっきりと写っていたのです。紛れもない心霊写真でした。
その少年は恨めしそうな顔で、私の方をじっと見つめていたのです。
それとどういう関係があったのか分かりませんが、私はそれから数ヶ月後に足の指を骨折する怪我を負ってしまいました。
この出来事から15年以上経ちましたが、幸い私の身に他の異変は起きていません。
あの日、供養塔で砂利が纏わりついてきたことや、心霊写真の事は話しても信じてもらえないだろうと思い、未だに誰にも言うことができていません。
戦争は多くの尊い命を奪い合う、悲惨で繰り返してはならない出来事だと改めて痛感しました。
以来、私は8月になると毎年そのお寺の供養塔へお花と線香をあげにいく事にしています。
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