実話系・怖い話「住み慣れた実家」
これは10年以上前の話です。
当時、私は実家暮らしをしていました。小学生の頃からずっと住んでいる、住み慣れた一戸建ての家です。
腰を悪くして休職していた私は、1日の大半を2階の自分の部屋で過ごしていました。
そんなある日の昼下がり、いつものように部屋で休んでいると、玄関のドアが開いたような音が聞こえました。
その日、両親は夕方まで仕事の予定で、誰かが帰ってくるはずのない時間帯です。
ドアの音は気のせいだと思いそのまま横になっていたのですが、しばらくすると1階で人が歩く足音と気配を感じました。
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「…まさか誰か侵入者?」
神経を研ぎ澄まして、1階へ意識を集中させます。
するとその足音は、私がいる2階へ上がってきたのです。
思わぬ異常事態に、私は何かただならぬ雰囲気を感じていました。
足音はゆっくりと、確実に近づいてきます。
私は怖さから汗をびっしょりかき、息を殺し目をつぶって耐えます。
ついに足音は階段を上り終え、私の部屋の前まで来て止まりました。
気のせいではなく、確かにドアの向こうに人がいる気配があります。
さらにその気配が、部屋のドアに手をかけたような音がしました。
私は恐怖のあまり体を動かすことが出来ず、今思えば金縛りというものにあっていたのかもしれません。
その後しばらく経って足音と気配は無くなりましたが、私は怖くてそのまま1時間以上動くことができませんでした。
ようやく気持ちが落ち着いて部屋を出ましたが、やはり部屋の外には誰もいませんでした。
異変がないか家の中をチェックしていると、父が帰ってきました。
父へ今あったことを話しましたが、玄関の鍵は閉まっていましたし、誰かが家へ入った形跡もありません。
10年以上住んでいる我が家でそのような奇妙な体験をしたのは初めてだったため、私は気味が悪くてなんだかショックでした。
その出来事を、もう実家を出ていた姉へ話すと、姉は「やっぱり」といった感じの予想していなかった反応を見せました。
なんと姉は、実家に住んでいた頃に何度となく奇妙な出来事に遭遇していたと言うのです。
例えば、姉が1階から2階へかけ上ったら、すぐ後ろを同じスピードで足音がついてきたとか、就寝中に何かに足を掴まれたなど、聞いただけでも鳥肌が立つような怖い体験をしていたのだとか。
その当時は幼かった私を怖がらせないために家族で隠していたようですが、実は実家では色々と奇妙な出来事が度々起こり、何度かお祓いもしていたそうです。
それでも奇妙な出来事は無くならず、家族は半ば諦めていたとの事のでした。
私はそれを聞いた日から、自分の家が怖くてたまらなくなりました。
今回の体験を機に、足音や気配を頻繁に感じるようになってしまいましたし、金縛りにあうこともあります。
こんな体験を話しておいてなんですが、私の家族には霊感のある人間は1人もいません。
実家でのみ、異変を感じるという状態でした。
この話を何気なく職場の先輩にしてみると、先輩は私の実家へ来たこともないのに
「それ、悪いものじゃないよ。」
と言います。
その先輩は少し霊感があり、自身も似たような経験があるそうです。
先輩曰く、その足音や気配は身内ではないのか、とのことです。
推測ではありますが、私達家族のことが心配で度々現れては見守っているのだと言います。
言われてみれば、何か危害を加える訳でもなく、姿を現して怖がらせるわけでもありません。
私はそれを聞いたとき、安心と申し訳ない気持ちで、なぜか涙が溢れました。
それからは実家で何か物音が聞こえても、その事を肝に銘じ、感謝の気持ちを持って生活するようになりました。
現在は私も結婚して家を出て、父も亡くなったため、母が1人で実家暮らしです。
怖がりな母ですが、そんな母を今もご先祖様が見守ってくれているのかもしれません。
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