恐怖の泉

実話系・怖い話「女子寮の見回り」

これは私が18歳、進学のために地元を離れて学校提携の女子寮へ入寮した時のお話です。

寮を選ぶ際、オートロック式のマンションタイプでお風呂やトイレ、キッチン付きの綺麗な所もありましたが、寮費が10万近くのものが多く親に気が引けていました…。
ですがパンフレットの最後に載っていた築40年の寮は月5万円と安く、「住めれば良いから!ここで!」と両親の不安を押し切り、今回の入寮となりました。

私の部屋は3階で6畳ワンルームでした。
設備は机とベッドのみ。風呂は時間が決まっていて、トイレや洗濯機などは全て共用。
更には門限が有り、24時以降は部屋の出入り禁止、外泊の場合は寮母に届け出を出すという感じの、昔ながらの寮という印象でした。

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学生生活は順調に過ぎ、友達も沢山できて特に不便を感じず半年が過ぎようとしていた頃、寮生から不思議な噂を聞きました。

「深夜に窓の外で、草を踏んで歩く足音がするんだけど…。」
「あ!それ私も…。人影が見えた気もする…でも怖くて確認できない!」

そう話すのは、全て1階に住む人達です。
「オカルト好きとしては、この目で確認しなければ!」という変な使命感にかられた私は、異変を確認しようと試みました。

早速その日の深夜、窓から階下を観察してみましたが…暗くてよく見えない。
そんな状態で1時間程経過した頃でしょうか。
微かに足音を感じて目を凝らして見てみると、誰かが中庭をゆっくり歩いているようでした。

寮の玄関は施錠されているし、周りは侵入防止(脱走防止?)で3m位の壁がある。その上には有刺鉄線が張り巡らされているので、侵入は困難なはずなのに…。
色々な可能性を考えていると、その何者かの動きが止まって、ふと私の方に顔を上げました。

そこには暗闇の中、無表情でこちらを見る寮母が立っていて、私は言葉にならない声を出しすぐに窓とカーテンを閉めました。

時計を見ると深夜2時。
寮母は一体何をしているのか…?
翌朝、意を決して寮母に理由を聞くと返答がありました。

「昨年、私の旦那が死んでね。寮を守るために彼がしていた夜中の見回りを、私が引き継いでいるの。
あなたみたいに深夜まで起きていたり、脱走する悪い子もたまに居るからね。あの人の分まで頑張るの。」

初めて耳にする話でしたが、一緒に経営されていた旦那様が亡くなられて今は寮母一人。色々な思いもあるんだろう…。
私はそう納得する事にしました。

これで万事解決だと思っていたある日、私は遊びに夢中になって門限に5分程間に合わず、寮母に激怒される出来事がありました。
当時私も若かったせいか「5分位…そんな怒らなくても…」とつい反論してしまい、説教は1時間にも及びました。
そしてその日の夜、いつも通り自分の部屋で就寝していると突然金縛りにあいました。

「え?え?」
と横向きのまま動かない体にパニックになっていると、背中側にある廊下から
「…ペタッ…ペタッ…」
スリッパで歩くような足音が聞こえてきました。

目は動かせますが体が動かず、その間にも足音はゆっくり、どんどん近づいて来ます。
ついに足音が私の部屋の前で止まり、大量の冷や汗と寒気で震えが止まりません。
背後に何かの気配を感じるんです。生温かい空気を当てられている、という感じでしょうか。
すると、静かな男性の低い声で

「お前か…」

訳も分からず心の中で「ごめんなさい!ごめんなさい!!」とひたすら叫び続けました。
するとフッと体が軽くなり、私はすぐさま後ろを振り返りましたが、いつも通りの自分の部屋でそこには誰も居ませんでした。

翌朝、隣の寮生に足跡の事を聞きましたが、誰も聞いていないと言います。
寮には男性が1人も居ませんから、誰かが気付くはずです。

しかも異変はこの日だけで終わらず、不定期ですがコンスタントに週数回、私は金縛りに見舞われるようになりました。
足音は毎回、男性の声は時折聞こえました。
1ヶ月もすると流石に精神的に参ってしまい、事情を両親に話して私は退寮する事になりました。
寮を出たその日から、金縛りが起こる事はありませんでした。

今考えると、亡くなった寮母の旦那さんが心配して今でも寮監を続けているのかもしれません。
そして寮のルールを破った私を叱りに来ていたのかな…とも思います。

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